2015 Fiscal Year Annual Research Report
メタルスカベンジャーによる極低放射能化技術の開発
Publicly Offered Research
Project Area | Revealing the history of the universe with underground particle and nuclear research |
Project/Area Number |
15H01027
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
清水 格 東北大学, ニュートリノ科学研究センター, 准教授 (10400227)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ニュートリノ / 素粒子実験 / 実験核物理 |
Outline of Annual Research Achievements |
ニュートリノや暗黒物質が関わる希少事象探索は、宇宙・素粒子の未解決問題を解き明かす鍵となっていると考えられており、神岡地下で進行する極低放射能環境を活用した実験的研究の重要性が高まっている。極微量放射性不純物を除去する新しい純化手法の候補として、簡易な純化手法で高い金属除去率が得られるメタルスカベンジャーが挙げられる。液体シンチレータを用いた二重ベータ崩壊探索を行うKamLAND-Zen実験では放射性重金属が主要なバックグラウンド源として観測されているが、仮に将来の高感度探索において信号が検出された場合、この純化手法によってバックグラウンドの可能性は迅速に排除される。 地下素核研究に向けて実験の一層の高感度化を実現するためには、低放射能化技術の強化が必要である。本研究では、メタルスカベンジャーを用いた放射性重金属の吸着手法を開発するため、液体シンチレータ中の放射性鉛に対する除去効率を測定した。メタルスカベンジャーの候補を選定するため、5社12製品の試薬に対してバッチプロセスによる吸着試験を行った。除去効率が高いものに対しては試薬を増量した吸着試験も行い、最大約95%の除去効率が得られることを確認した。また、実機の純化では液体シンチレータを試薬入りのカラムに連続して送り込むカラムプロセスによる吸着が必要となるため、小規模な装置を構築しカラムプロセスでの吸着性能を評価した。現状では最大でも85%程度の除去効率しか得らえなかったが、流量・温度等のパラメータを最適化による除去効率の向上も期待できる。また、メタルスカベンジャーによる吸着純化では、純水による液液抽出では除去できない成分も除去できることが分かったため、極性の小さい有機金属に対しても吸着性能を示している可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の目標であるメタルスカベンジャーを用いた放射性重金属の吸着手法の開発を目標としていたが、液体シンチレータ中の放射性鉛に対する除去効率の測定手法の確立、メタルスカベンジャーの候補選定、カラムプロセスでの除去効率の評価が完了した。当初の予定よりも順調に研究が進んだため、来年度の計画を一部先行して実施している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、メタルスカベンジャーによる放射性鉛除去効率を高めるため、温度・流速などのパラメータによる吸着条件の最適化を行う。また、液体シンチレータ中での鉛の化学形態に対する理解をさらに深めるため、液体シンチレータを加熱、または酸・アルカリ水溶液と撹拌することによって化学形態を変化させた上で除去評価を行う。
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Research Products
(10 results)