2015 Fiscal Year Annual Research Report
二重ベータ崩壊実験用Ca同位体のレーザー濃縮
Publicly Offered Research
Project Area | Revealing the history of the universe with underground particle and nuclear research |
Project/Area Number |
15H01032
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
仁木 秀明 福井大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00135758)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | レーザー同位体分離 / カルシウム / 二重ベータ崩壊 / 光イオン化 |
Outline of Annual Research Achievements |
ニュートリノのマヨラナ粒子性の検証のために、Ca-48を用いた二重ベータ崩壊実験がその低バックグラウンド性において有望と期待されている。しかしCa-48の天然同位体存在比は0.2%以下と小さいため、その濃縮技術の開発が切望されている。本研究では濃縮比の高い同位体分離法として期待されるレーザー法に着目し、同位体を選択的にイオン化し回収する方式について、実験的にその性能を明らかにすべく、研究を進めた。27年度は当初の計画通り、連続発振半導体レーザーによる選択励起とそれに引き続くパルス発振YAGレーザーの第2高調波によるイオン化を組み合わせた選択的光イオン化法について以下のように実験を進めた。 (1)Ca原子ビームの発生:真空容器内でCaをヒータ加熱(~550℃)し、Ca原子蒸気を発生させ、アパーチャによりコリメートし、鉛直方向に原子ビームを形成した。 (2)レーザー照射:選択励起用光源である423nm近傍で同調可能な連続発振半導体レーザー光と、イオン化用YAGレーザー光を同軸上に重ね、真空容器内で原子ビームに直角に照射した。 (3)同位体選択性の分析:レーザー照射により生成したCaイオンは電界によりレーザービームおよび原子ビームの両方に対して直角方向に偏向し、飛行時間法を用いて質量分析を行った。 結果の概略は次のとおりである。[1]YAGレーザーのパワー密度(強度)を比較的小さく設定した場合、特定の同位体を2倍程度濃縮することができた。[2]YAGレーザーのパワー密度を変化させて行った実験から、[1]の照射条件ではイオン化効率が低いこと、パワー密度の増加とともに生成イオン量は増加するが同位体の選択性が低下することが観測された。 以上のことから、YAGレーザーの第2高調波による非共鳴的イオン化を用いた場合、同位体の選択性とイオン化効率の両者を同時に高くすることは難しいと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、Caの原子ビームを発生させ、これに選択励起用半導体レーザー光と、イオン化用YAGレーザーの第2高調波を照射する分離実験を試みた結果、同位体選択性とイオン化効率について大まかな評価することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
27年度は、423nm近傍の波長で同調可能な連続発振半導体レーザーとパルス発振YAGレーザーの第2高調波をそれぞれCa同位体選択励起用光源、およびイオン化用光源として用い、レーザーでイオン化されたCa原子の質量スペクトルを飛行時間法を用いて測定することにより、予備的な分離実験を行った。その結果、レーザー照射領域における標的同位体の高効率イオン化と同位体の高い選択性を同時に達成することは困難であることが示唆された。このことを踏まえ、今後、同位体選択性とイオン化効率の両方を改善するために、YAGレーザーの代わりに波長可変パルス色素レーザーを用いた共鳴的イオン化の方式を採用し、分離実験を試み性能を評価する。手法に関しては基本的に昨年と同様であるが、イオン化にどの波長を用いるかというところが性能に大きく影響すると考えられる。実施の手順は次のとおりである。 (1)Ca原子ビームの発生:真空容器内でCaをヒータ加熱によりCa原子蒸気を発生させ、アパーチャによりコリメートし、鉛直方向に原子ビームを形成する。 (2)レーザー照射:選択励起用半導体レーザー光と、イオン化用YAGレーザー光を同軸上に重ね、真空容器内で原子ビームに直角に照射する。選択励起段のCaの遷移確率が大きいため、数10mWの半導体レーザーは集光せずに照射する。一方、色素レーザー光はレンズで集光して照射する。 (3)同位体選択性の分析:レーザー照射により生成したCaイオンは電界によりレーザービームおよび原子ビームの両方に対して直角方向に偏向し、質量分析を行う。過去の文献により適用可能な波長を選択し、それらの波長に色素レーザーを同調して分離実験を試みる。また、色素レーザーの波長を広範囲にわたり掃引し、Cano励起状態からのイオン化スペクトルの取得を試みる。これらより本方式の性能を評価する。
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Research Products
(5 results)