2015 Fiscal Year Annual Research Report
薄膜蛍光フィルムを利用した表面バックグラウンド除去技術の開発
Publicly Offered Research
Project Area | Revealing the history of the universe with underground particle and nuclear research |
Project/Area Number |
15H01035
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
吉田 斉 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (60400230)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 低バックグラウンド計測技術 / 薄膜蛍光フィルム / シンチレーション検出器 / 宇宙暗黒物質 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、極低バックグラウンドを必要とする実験的研究課題に共通する問題(表面バックグラウンド)を解決するための新しい検出器材料の開発を目的とする。表面バックグラウンドは、材料の高純度化や洗浄によって低減する方法が一般的であるが、本研究は、「検出器材料表面に発光機能を持った熱可塑性薄膜素材(薄膜発光フィルム)を溶着することでアクティブに表面バックグラウンドを除去する方法」を開発する取り組みである。 高エネルギー実験で広く利用されているポリスチレン(以下、PS)ベースの蛍光素材や、エステル系樹脂のポリエチレンナフタレート(以下、PEN)をベースとした素材を利用して、厚さ(25~200μm厚)の薄膜発光フィルムを製作した。発光フィルムの性能評価として、エネルギーあたりの発光量、発光時間特性(発光の減衰時間)、素材の透明度など、光学特性評価を行った。その結果、PENベースフィルムは透明度の高いものが入手できず、蛍光量についても透明度が悪いために吸収が起きていると考えられ十分な評価ができなかった。他方でPSベースフィルムは、発光量が10000光子/MeV程度得られ、時定数も10nsecと理想的な性能を得ることができた。 WIMPs検出器結晶として有望なCaF2結晶とPSベース薄膜発光フィルムの組み合わせを用いて、発光波形の違いによる表面バックグラウンド除去原理の検証を行った。実験では、疑似的な表面バックグラウンド信号として、外部からベータ線源を照射しそれぞれの波形を記録、分析して外部から入射されたベータ線事象が高い効率で識別できることも確認でき、原理検証に成功した。除去効率の定量的な評価は、ベータ線源から発生する制動放射ガンマ線などの影響が原因で誤差が大きく、正確な除去効率を評価するには至らなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画していた実験項目は、おおよそ実行できた。研究計画では2種類のフィルムを製作して性能比較を行う計画であったがPENベースフィルムの開発が順調に進まず、高性能Filmが制作できなかった。そのため、性能評価はPSベースフィルムのみで進めることとなったが、こちらは要求を十分に満たす性能が得られており、評価測定もほぼすべて行うことができた。27年度中に、評価測定が一通り実施できたことで評価方法の改善項目も明確にできた。また、測定評価の経験を積んだことで、新しい蛍光Filmができれば迅速に評価でき、Film開発ペースは上がることが期待できる。 すでに、CaF2結晶を使用した除去原理の立証に、初年度で成功したことで、今後は研究のステージを、詳細な性能評価や表面バックグラウンドの除去感度の改善という状況へと移すことができる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の計画は、前年度の評価結果をもとに、以下の項目について研究を進めていく。 ①薄膜フィルム状の軟化プラスチックシンチレータを利用して、無機結晶シンチレータと組み合わせた検出器での除去性能の定量的評価を行う。前年度の研究により波形情報を用いた外部荷電放射線除去の原理が検証できており、その性能を定量的に評価する。具体的には、ベータ線源による評価で、制動放射ガンマ線の影響を取り除くためトリガー用ベータカウンターの実装や、エネルギー依存性を調べるための小型分析磁石を使ったベータ線エネルギー分析器を使用する。 ②将来の低バックグラウンド化へ向けて材料に含まれる放射性不純物量の分析と、低放射能材料を進めていく。地上測定では感度不足であるため、原料を地下実験室のGe検出器を用いて放射性不純物測定を行う。また、自己発光事象を使用して、U,Th不純物の内部放射能分析も進める。 ③発光フィルム材の性能評価項目として素材の強度についてなど、一般特性評価を行う。 ④WIMPs探索用検出器への応用として考えている、NaI(Tl)やCsI(Tl)、CaF2(Eu)などの無機シンチレーション検出器と薄膜蛍光Filmの複合検出器を作成し、地下実験室にて低バックグラウンド測定を行い、バックグラウンド除去能率の有効性の実証を行う。
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Research Products
(3 results)
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[Journal Article] Low background techniques in CANDLES2015
Author(s)
K. Nakajima, T. Iida, T.Kishimoto, K. Matsuoka, M. Nomachi, S. Umehara, W. M. Chan, H. Kakubata, X. Li, T. Maeda, T. Ohata, B. Temuge, K. Tetsuno, V.T.T. Trang, T. Uehara, S. Yoshida, K. Morishita, I. Ogawa, K. Sakamoto, Y. Tamagawa, M. Yoshizawa, K. Fushimi, R. Hazama, N. Nakatani, and K. Suzuki
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Journal Title
AIP Conference Proceedings
Volume: 1672
Pages: 110004
DOI
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