2015 Fiscal Year Annual Research Report
超低バックグラウンドゲルマニウム検出器を用いたタンタル180mの半減期測定
Publicly Offered Research
Project Area | Revealing the history of the universe with underground particle and nuclear research |
Project/Area Number |
15H01036
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
梅原 さおり 大阪大学, 核物理研究センター, 特任助教 (10379282)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 長寿命核 / タンタル180m / 半減期測定 |
Outline of Annual Research Achievements |
タンタル180mは、天然に存在する唯一の核異性体である。特にこのタンタル180m は、励起状態が基底状態よりもはるかに安定であり、励起状態の半減期がもっとも長い原子核である。核異性体は、励起エネルギーや半減期から、核構造情報を得ることができるため、原子核物理の分野で関心を持たれる原子核である。しかし、現在、タンタル180mの半減期は得られておらず、半減期の下限値のみが与えられている。本研究では、このタンタル180mの半減期を、ゲルマニウム半導体検出器を用いて測定する。 タンタル180mの半減期は、1e+16年以上と非常に長いため、高感度測定には低バックグラウンド化が必要である。そのために、本研究では、1)ゲルマニウム検出器の波形解析(信号波形情報を用いた事象位置の解析的特定による低バックグラウンド化)、2)ゲルマニウム検出器システムの低バックグラウンド化、を進め、最終的に3)タンタル180mの半減期測定を行う。そのために、本年は、それぞれについて下記を行った。 1)ゲルマニウム検出器の信号波形解析:標準γ線源を用いて、ゲルマニウム検出器の位置ごとの波形データを収集した。実際に、位置ごとに波形が異なることを確認した。 2)ゲルマニウム検出器システムの低バックグラウンド化:ゲルマニウム検出器の遮蔽材として、新しい素材の評価を進めた。新しい遮蔽材候補として、タングステン遮蔽材を選定した。 3)タンタル180mの半減期測定:半減期のテスト測定として、タンタルサンプルを用いた長時間の低バックグラウンド測定を行った。得られた測定データを用いて、タンタルサンプルのバックグラウンドを調査した。このタンタルサンプルの低バックグラウンド化をすすめるため、酸を用いたサンプルの洗浄作業を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では、波形解析を先にすすめる予定であった。しかし、研究の効率的遂行のために、実際には、タンタルサンプルの低バックグラウンド測定を行った。波形解析に関する研究項目が、次年度にいくつか繰り越されることになるが、タンタルサンプルの低バックグラウンド測定は先に行われているため、研究全体としては、予定通りに進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、極低バックグラウンドゲルマニウム半導体検出器を開発し、タンタル180mの高感度半減期測定を行う。そのために、1)ゲルマニウム検出器の波形解析(信号波形情報を用いた事象位置の解析的特定)による低バックグラウンド化、2)ゲルマニウム検出器システムの低バックグラウンド化、3)極低バックグラウンドでのタンタル180m半減期測定、を行う。下記に、それぞれについて述べる。 1)ゲルマニウム検出器の信号波形解析による低バックグラウンド化:波形情報を用いた事象位置の判別のためには、事象位置が特定できる測定を行なう必要がある。そのために、本研究で開発するゲルマニウム検出器と、NaI(Tl) 検出器を用いた同時計測を行なう。この同時計測測定によって、ゲルマニウム検出器内部のそれぞれの位置での事象の信号波形情報を収集する。その波形を用いて、位置ごとの波形の違いから事象位置特定の解析手法を確立する。 2)ゲルマニウム検出器システムの低バックグラウンド化:ゲルマニウム検出器システムの低バックグラウンド化のために、シールドシステムの再構成を行う。ゲルマニウム検出器近くに、銅のシールドを追加設置するとともに、新しいシールド素材の性能評価を行う。性能評価は、実測およびシミュレーションを用いて行う。 3)極低バックグラウンドでのタンタル180m半減期測定:新しいシールド構成で、タンタル180m半減期測定を行う。検出効率は、標準γ線源を用いた実験データと、シミュレーションとから評価する。シミュレーションで得られた検出効率を用いて、タンタル180m半減期評価をする。
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Research Products
(4 results)