2015 Fiscal Year Annual Research Report
サイズ・組成を原子精度で制御した担持金属クラスターの3D構造とその触媒作用の解明
Publicly Offered Research
Project Area | 3D Active-Site Science |
Project/Area Number |
15H01042
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山添 誠司 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (40510243)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 金クラスター / 触媒 / 3D構造 / X線吸収分光法 / 透過電子顕微鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
100個程度以下(粒径2 nm以下)の原子からなる金属クラスターは,構成する原子の種類と数そして幾何構造により新規かつ多様な電子状態をとるため,バルク物質や対応する原子では見られない特異な性質を示す.また担持金属クラスターでは担体―金属クラスター界面の形成による新たな機能の創出が期待できる.革新的な触媒を開発するには,界面構造を含めたこれら4つの構造因子を独立に制御する技術が必要である.しかし,幾何構造や界面構造を決定する一般的な手法がないため,担持金属クラスターの触媒作用は完全に理解されていない. 本研究ではサイズや組成を原子精度で制御した担持金属触媒を調製し,その3D構造と触媒作用の関係を明らかにすることを目的とする.本研究目標を達成するために,平成27年度では,サイズを制御した担持金クラスター触媒を調製し,ベンジルアルコール酸化反応に対するサイズ効果を検討した.また,光電子ホログラフィー測定のための試料調製と,透過電子顕微鏡を用いたナノ構造体イメージングのための試料作製準備および構造評価に取り組んだ. ベンジルアルコール酸化反応に対するサイズの異なる担持金クラスター触媒の活性を比較したところ,担持Au144触媒が最も高い触媒活性を示した.X線吸収分光法により担持金クラスターの構造を調べた結果,100原子以上のサイズの大きい金クラスターでは正二十面体(Ih)構造が形成しており,Ih構造が高い触媒反応活性を示すことが示唆された. カーボン上に担持した金クラスターの3D構造を明らかにするための手法の一つとして,電子回折イメージングの研究を計画班の北海道大学郷原先生と共同で進めている.TEMグリッド上への配位子保護金クラスターの高分散担持法を開発し,原子分解能で担持金クラスターを観察できることがわかった. 電子線ホログラフィー用の試料については現在調製中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初,平成27年度では,サイズを制御した担持金クラスター触媒を調製し,ベンジルアルコール酸化反応に対するサイズ効果の検討と,光電子ホログラフィー測定のための試料調製を行う予定であった.すでにサイズを制御した担持金クラスターの触媒調製と弁じるアルコール酸化反応に対するサイズ効果を実験的に明らかにした.さらに,X線吸収分光法により,サイズの大きい金クラスターでは正二十面体構造が形成しており,これが高い触媒活性を示すことが示唆された.X線吸収分光法により担持金クラスターの3D構造に関する情報が得られたことは,当初の予定を上回る成果である. 一方,光電子ホログラフィー測定のための試料調製では,1.伝導性の単結晶基板が必要であること,2.担持した金クラスターが結晶性であること,3.担持した金クラスターの結晶配向性をそろえること,が求められる.しかし,金クラスターは室温付近に融点があるため結晶性の高い金クラスターの作製と,結晶配向性をそろえることが困難であるため,1年での試料作製は難しいと判断した.そこで,透過電子顕微鏡での電子線回折を用いた3Dイメージジングに新たに挑戦した.北海道大学の郷原先生と共同で研究を進めているが,カーボン上への配位子保護金クラスターの高分散担持法を開発し,原子レベルで観察できることが明らかになった.これまで原子レベルでの観察が困難であったため,大きな進展である.
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度では,透過型電子顕微鏡により担持金クラスターの幾何構造が触媒作用に及ぼす効果を明らかにする.また,電子線イメージングを用いて,幾何構造だけでなく,3D構造の解明を目指す.さらに,単結晶基板上に金クラスターを配向担持させ,光電子ホログラフィーによる担持金クラスターの3D構造解明を目指す.以下に詳細を示す. 1.透過型電子顕微鏡による担持金クラスターの構造解明: 担持金クラスターの幾何構造を明らかにするために,原子精度で観察が可能な透過型電子顕微鏡により原子の配列を評価する.電子線によるダメージや加熱によりクラスターの構造が変化する可能性があるため,電子線密度を極力下げて測定を行う.また,TEM像からの幾何構造の推定にはモデル構造からのシミュレーションを用いる. 2.電子回折イメージングを用いた金クラスターの3D構造評価: TEMグリッド上に配位子保護金属クラスターを高分散させ,その3D構造を電子回折イメージングにより解明することを目的とする.これにより,単結晶の作製が困難であった配位子保護金属クラスターの構造を明らかにする.また,電子線を当て続けるとクラスターが壊れ,表面の保護配位子が除去されているように見えている.そこで,電子線照射を続け,カーボン上に担持した金属クラスターの構造の観察も行う. 3.光電子ホログラフィーによる担持金クラスターの3D構造解明: 金属酸化物単結晶基板上に金クラスターを固定化するとともに,配向方向を制御し,光電子ホログラフィー測定のための試料作製に取り組む.配位子保護金クラスターの末端に官能基を導入することで,基板に選択吸着・配列させる技術を確立する.
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Research Products
(4 results)