2015 Fiscal Year Annual Research Report
冥王代極限環境下での化学進化から原始生命に至るシミュレーション実験研究
Publicly Offered Research
Project Area | Hadean Bioscience |
Project/Area Number |
15H01069
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Research Institution | Hiroshima Shudo University |
Principal Investigator |
川村 邦男 広島修道大学, 人間環境学部, 教授 (50204772)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 冥王代環境 / RNAワールド / 化学進化 / 地球化学 / 宇宙科学 / 熱水 / フローリアクター / 生命の起源 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,地球科学的に得られた原始地球環境と整合する環境下で,化学進化によって生成したオリゴヌクレオチドやオリゴペプチドがどのようにしてリボザイムやタンパク質のような高度な生化学機能を獲得したのかを解明することにある. 我々は,この20年間に様々なタイプの熱水フローリアクターを世界に先駆けて開発してきた.特に最近では,鉱物を充填したリアクターカラムに熱水通過させることで,鉱物と熱水がダイナミックに相互作用する環境を模擬できる装置を確立した.しかし,この手法を用いても,粘土鉱物のような粒子が極めて細かい場合や,リアクターが目詰まりする場合には,反応追跡できなかった.そこで,本課題では,①縦型リアクターによって,粘土の沈降によって目詰まりを防ぐタイプのリアクター,②粘土と反応溶液を混合したスラリーをリアクターに流すという,従来とは異なる発想法により,新しいタイプのリアクターの開発を行った.これらのリアクターを検証した. ①縦型リアクターについては,粘土鉱物を充填したリアクターを用いて試験したが,リアクターカラムの出口では目詰まりを防ぐことはできなかった.従って,この手法は断念した. ②スラリー自体を送液するという手法を検証した.第1にポンプに直接スラリーを導入することを試みた.このために,スラリーポンプを用いたが,スラリーの送液は可能ではあったが,高濃度では送液が困難でありポンプ故障の原因となることを知った.これは粘土には細かい石英砂などが含まれているためであり,微粒子を除去したスラリーの調製法を検討した.一方,ポンプに障害を与えない手法として,インジェクターを介してスラリーを導入することを試み,送液できることを確認した.このケースについては,圧力調節器を末端につけ,高圧を維持できることも確認した.現在,高温下での試験を行っている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題の目標の半分である,フローリアクターの製作についてはおおむね完了したので,おおむね順調に進展していると評価できる.この種の装置は,計画段階では予想できない問題が実際には発生する.当初は粘土の沈降が起こる程度に長い縦型リアクターを用いれば,粘土を含む反応系を解析できると考えた.しかし実際には,粘土が予想以上に粘性が高く送液が困難であったため,根本的に手法を見直さなければならなかった.そこで,粘土をカラムに詰めるという考えから飛躍し,粘土を含むスラリーそのものをリアクターカラムに流し,反応解析するという逆転の発想によって,これをほぼ解決できた.また,ポンプへのダメージによって流速精度を確保できない可能性や,圧力調節器をスラリーが通過できるかどうかなどの課題が登場したが,それらについても試行錯誤によって克服できた.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,反応ターゲットを絞り,本装置の利点を生かしつつ研究を行う.すでに,本装置を完成するところまでこぎ着けたので,ルーチンワークについては,研究補助者を雇用し,研究を促進する予定である.また,研究協力者とも密に連絡を取り研究を推進する. 一方,冥王代化学進化グループとはこれまでに数回ワークショップ等に参加して,情報交換を行った.この結果,地球科学的にどのような環境をシミュレーションするというニーズがあるか,明確になりつつある.従って,今後もこれらのグループと十分に情報交換をして,フローリアクターとしてどのようなタイプのモノが最も必要とされているかに配慮しつつ,効率的に研究を進める.
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Research Products
(6 results)
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[Book] Chapters “Activated Nucleotide”, “Nucleotide Phosphirimidazolide”, and “Oligonuleotide”, in “Encyclopedia of Astrobiology”, Eds. by M. Gargaud, W. M. Irvine, R. Amils, J. Cernicharo Quintanilla, H. J. Cleaves, D. Pinti, D. Rouan, T. Spohn, S. Tirard, M. Viso2015
Author(s)
Kunio Kawamura
Total Pages
2763
Publisher
Springer