2015 Fiscal Year Annual Research Report
Thermus thermophilusリボソーム変異株の創成と進化
Publicly Offered Research
Project Area | Hadean Bioscience |
Project/Area Number |
15H01072
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
宮崎 健太郎 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生物プロセス研究部門, 研究グループ長 (60344123)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 16S rRNA / Thermus thermophilus / 欠損株 / 機能相補 / リボソーム |
Outline of Annual Research Achievements |
本公募研究班では、Thermus thermophilusを題材として、リボソーム30Sサブユニットの主構成成分である16S rRNAを、異種微生物由来のものと置換した変異株を創成する。得られた変異株を種々の環境で培養し、安定した適応変異株を取得する。進化前後に起きる表現型の変化とともに、ゲノムやトランスクリプトームの変化を解析する。以上、種分化を模倣した進化プロセスを実験的に再現し、それを描写し、翻訳系とゲノムの協奏的な進化の態様を明らかにする。 本年度は、まずThermus thermophilusゲノム内に2コピー含まれる16S rRNA遺伝子のうち一つをノックアウトした変異株を作成する。残存する1コピーを異種生物由来の16S rRNAと置換し、Thermusリボソームの他成分との和合性を生育相補性に基づき検証する。 研究室所蔵のThermus属細菌及び産総研玉木秀幸博士より供与いただいたThermus属細菌10株余りより16S rRNA遺伝子をPCR増幅した。また堆肥などの環境ゲノムを用いて、同様に16S rRNA遺伝子をPCR増幅した。 Thermus菌の宿主としては、Thermus thermophilus HB27株を選定した。2コピーのうちの一つについて欠損を試みている。特に、TTC3024は、ピリミジン合成系遺伝子pyrEFと隣接しており、16S rRNA遺伝子の欠失と同時にpyrEF遺伝子の一部(あるいは全部)を欠失させることにより、5フルオロオロチン酸(5FOA)の耐性クローンとして獲得できると考えられたため、欠失のさせ方を変えた幾つかのコンストラクトを構築した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Thermos thermophilusゲノム上に2コピーある16S rRNA遺伝子の一つをノックアウトすることに成功した。欠損株の作成においては、16S rRNA遺伝子に隣接するピリミジン合成系酵素を合わせてノックアウトすることで5-フルオロオロト酸(5FOA)耐性としてポジティブに選択できることを予想したが、この予想通り欠損株は5FOA耐性を示した。 このように欠損株が構築できたことにより、次年度よりゲノムに残存する16S rRNA遺伝子と、異種16S rRNA遺伝子を交換し、機能相補の検証などを行う体制が整った。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の進捗を踏まえ、来年度は、Thermusの遺伝子欠損株の作成を早急に進める。これまではTTC3024座を優先的に欠失させることをすすめてきたが、もうひとつのTTC3048座の16S rRNA遺伝子をターゲットとした欠失や薬剤耐性を付与した変異型16S rRNA遺伝子による形質転換などによりシングルコピーで生育する変異株を構築する。 欠損株を取得後は、すでに調製済みの外来16S rRNA遺伝子を用いた機能相補実験を行う。生育相補の確認された16S rRNA遺伝子について遺伝子解析を進め、過去に大腸菌の系で蓄積された知見との比較を行う。 表現型解析については、とくに温度適応の観点から、集中的に行う。野生株の生育至適温度に対し、ある程度低温シフトすることも予想される。進化実験にあたっては、低温での継代培養を繰り返すことで生育の復帰が起きることも予想されるが、この場合、ここの代謝系遺伝子などシステム全体が低温シフトするのか、などといった観点で、ゲノム変異点の解析や温度ごとのトランスクリプトーム解析などを行い、適応進化の分子機構を明らかにする。最終的には元株の特徴をできるだけ排した「新種」を創成したい。
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