2015 Fiscal Year Annual Research Report
マルチメタル正四面体型ホスト分子のゲストの対称性を反映した多段階光応答性
Publicly Offered Research
Project Area | Application of Cooperative-Excitation into Innovative Molecular Systems with High-Order Photo-functions |
Project/Area Number |
15H01079
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
山村 正樹 筑波大学, 数理物質系, 講師 (40524426)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 超分子錯体 / キラル正四面体 / 円二色性 / LIEST / フォトクロミズム |
Outline of Annual Research Achievements |
複数の分子が集積して形成される超分子では、個々の分子単独では見られない機能を発現することがある。このような協同的な機能は、非線形の応答を示すことから興味が持たれている。特に、複数の分子の自己集積により形成されるポーラス化合物は、ゲスト分子を包接できる協同的ホスト分子として機能する。本研究では、自己集積型ホスト分子に光機能を付与することで、包接するゲスト分子に応答した光機能の制御を目指している。 これまでの研究で、リン原子の特性を利用したおわん型ホスト分子がフラーレンC60のホスト分子となることを見出している。しかし、溶液中おける1の集積はエントロピー的に不利であるため、安定なホスト分子を得ることができなかった。そこで、金属への配位を用いてホスト分子1を集積させたメタロホストを合成し、ゲスト分子の包接における光物性の変化を検討した。 ホスト分子1を基本骨格としたおわん型配位子Lを新規に合成し、亜鉛イオンと反応させることで正四面体型メタロホストを合成した。また、Lと亜鉛イオンとの反応をC60共存下で行うことで、C60を内包したメタロホストC60⊂2を合成、単離することにも成功した。おわん型分子1やLの特徴の1つに、曲面構造に基づくキラリティーを有することがある。よって、集積型ホスト分子においても、その内部空孔はキラリティーを有することになる。光学分割した配位子Lを用いることで、メタロホスト2を純粋なエナンチオマーとして合成することに成功した。円二色性スペクトルを測定したところ、C60の吸収領域に顕著なコットン効果が観測された。すなわち、メタロホストのキラル包接場によって、C60の電子状態にキラリティーが生じていると言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の第一段階として、正四面体型メタロホストの合成とゲスト分子の包接と分光特性の関係を明らかにした。四つの金属錯体部位を有する正四面体型メタロホストでは四段階の励起状態を取りうるが、励起に伴って対称性が変化するため、ゲスト分子の対称性に合わせてホストの励起状態を制御できると期待される(図4)。現在、d-ブロック金属錯体の比較的超寿命の励起状態を用いて、ゲスト分子が制御する高次励起状態を目指して検討を行っている。 配位子となる化合物の合成には成功したが、その溶解度が低く、錯体形成の検討が十分に行えなかった。配位子の溶解度の向上を含めて、さらなる検討が必要である。 上記の検討とは別に、光反応性部位としてアゾベンゼンを末端に3つ有するキラルおわん型分子を合成した。おわん型分子において3つのトランスアゾベンゼンがキラルに配向することから、比較的大きな円二色性を示した。トランスアゾベンゼンに光照射して、シス体へと異性化させたところ円二色性の強度が減少した。これは、トランスからシス体への変化によって遷移電気双極子の向きが変化したためと考えられる。 以上のように、研究の主目的となる錯体形成に関しては検討課題が多いものの、高次複合光応答に関して新しい知見も得られており、現在のところ順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
キラルな正四面体型メタロホストの合成は達成できているため、この骨格を用いて光誘起スピン転移(LIEST)を起こす錯体の構築を試みる。具体的には、トリス(イミダゾリルピリジル)鉄(II)錯体のような正八面体型の鉄錯体を用いることとする。溶解度の低下が検討を困難にすることから、適切な分子設計を行う必要がある。上記の検討に加えて、キラル正四面体型メタロホストがフラーレンを包接することができることから、包接させたフラーレンの光誘起電子移動や、フォトクロミック分子を導入したおわん型分子の光応答性、特に分子集積体を構築したときの光応答性など、幅広い視点で高次複合光応答に挑戦する方針である。
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Research Products
(30 results)