2015 Fiscal Year Annual Research Report
人工電磁探査を用いた沈み込み後の地殻流体の実態解明
Publicly Offered Research
Project Area | Crustal dynamics-Unified understanding of intraisland deformation after the great Tohoku-oki earthquake- |
Project/Area Number |
15H01147
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
笠谷 貴史 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地震津波海域観測研究開発センター, 主任技術研究員 (90373456)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 比抵抗構造 / 海底電気探査 / CSEM法 / MT法 |
Outline of Annual Research Achievements |
島弧内陸地殻の変形特性および断層強度に深く関わる地殻流体は、沈み込むプレートで取り込まれる流体にも大きく影響されると考えられる。電磁気学的手法によって得られる比抵抗構造は地下の流体分布を明らかにするのに適している。本研究では、自然電磁場で得られる比抵抗構造の再解析とその適応限界、人工電流源を用いた探査法の適応について検討する。自然電磁場を用いるMT法による比抵抗構造と人工電流源を用いた電気探査およびCSEM法を用いることで、対象とする沈み込み帯を浅部から深部までカバーすることが出来る。MT法によって得られた比抵抗構造からは、海底表層の低比抵抗とその下部の東湖近くの高比抵抗、プレート上部の構造が沈み込みに伴って、低比抵抗からやや高比抵抗に推移し、深部で再び低比抵抗になることが明らかになった。海底表層と島弧地殻の構造は反射法および屈折法による構造と似た構造を呈している。プレート上部の構造変化に関しては、過去の滑り面との比較や比抵抗値の感度チェックを行って、比抵抗構造の確からしさを評価した。人工電流源は海底熱水鉱床探査のために開発がスタートし、安定した電流送信が可能な段階にある。この電流源を利用し、CSEM法で使用可能な高サンプリングレートの海底電位計の製作を行い、その性能評価を実施する。MR16-E01航海では、最新の電流源を搭載した曳航体と電位差計による人工信号の送受信を行い、1マイル程度の距離からの電流送受信に成功した。電気探査としても深度約300-500m程度の探査深度を得られる可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
自然電磁場を用いたMT法データの解析で得られた北緯40度の比抵抗構造から、プレート沈み込みに伴う特徴的な比抵抗構造の変化について、感度チェックを行った。プレート上部の比抵抗構造は、(1)海溝軸付近からバックストップインターフェースのあたりまでは低比抵抗、(2)海溝軸から50km付近からはやや高比抵抗に推移、海溝軸から100km、深度20km付近からは再び低比抵抗と推移している。このうち(2)は過去の大きな地震の震源の位置、(2)はそれぞれの地震のすべり量の大きいエリアに相当するため、地震発生とその規模の大きさを示唆するものと考えられる。感度チェックは各ブロックを低比抵抗体の場合は100, 1000ohm-mに、高比抵抗体は10ohm-mに置き換えてForward計算で行った。その結果、いずれの構造も置き換えた比抵抗ブロックでは観測データを説明することが出来ないことが分かった。人工電流源を用いた探査は東北沖での航海がないため、資源探査で行われた航海において信号送受信試験を実施した。これまでに東北沖で予察的に行われた実験では20A程度であったが、今回は2倍以上の電流量(40-50A)を送信することが出来た。また、電位差計では、1マイル離れた地点からの送信電流を受信することができた。ダイポールダイポール法として送受信距離から推定すると、少なくとも300m程度の探査深度を得ることができると考えられる。CSEM法としての解析は終了していないが、電気探査よりは深部の情報を得ることが出来ると考えられる。この実験では125Hzでのデータ取得を行ったが、CSEM法での波形インバージョンを可能とする1kHzのサンプリングが可能な電位差計を製作し、室内でのノイズ評価などを行った。
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Strategy for Future Research Activity |
自然電磁場を用いて得られた比抵抗構造については、H27年度に実施した感度チェックの結果を加えて、論文投稿をめざして得られる情報の整理を行う。人工電流の送受信試験の結果について、取得されたデータを元に電気探査および電磁探査としての時系列データからの波形切り出しなどの信号処理技術を、および切り出された波形から電気探査、電磁探査それぞれの構造解析に必要な入力データの作成スキームの確立を行う。また、電気探査と電磁探査、それぞれの解析ソフトウェアを用い 沈み込み域での観測に必要な電流送信のスペックの検討を行う。
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Research Products
(2 results)