2015 Fiscal Year Annual Research Report
CRISPRシステムを用いた一次シリア情報発信の実証と分子基盤解析
Publicly Offered Research
Project Area | Cilium-centrosome system regulating biosignal flows |
Project/Area Number |
15H01207
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
池上 浩司 浜松医科大学, 医学部, 准教授 (20399687)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | シリア / ゲノム編集 / エクトソーム / 小胞放出 / 刺激 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、以下の三つの研究成果があった。 1)CRISPRシステムを用い、Ift88以外のノックアウト対象として、シリア関連疾患との関係が報告されている遺伝子3種類、エクソソーム放出に関係する遺伝子1種類、合計4種類の遺伝子についてノックアウト細胞を樹立した。本成果は交付申請時の研究実施計画に沿ったものであり、計画どおり研究が進展したことを示す。エクソソーム放出に関係する遺伝子については、研究実施計画ではCD81のノックアウトを計画していたが、エクソソーム放出との関連性に疑義が持たれたため、別の遺伝子を対象にした。 2)Ift88ノックアウト細胞と野生型細胞を用い、刺激により放出されるシリア放出エクトソームに含まれるタンパク質をショットガンプロテオミクスで明らかにした。シリア内輸送タンパク質やこれまでにシリア関連疾患との関係が報告されているタンパク質に加えて、シリアとの関連が報告されていないタンパク質が複数同定された。本成果は、本研究が目指す「シリアから放出される情報カプセルの内容物解明」を達成した点で極めて重要なものである。また、エクトソーム放出が刺激依存性であることを示した点も、科学的に意義深い。 3)CRISPRシステムを用い、上記2)で同定したタンパク質の一つについて、蛍光タンパク質をノックインし、内在性タンパク質を蛍光標識し、過剰発現に依存せずに蛍光ライブイメージングすることを可能にした。また、蛍光タンパク質に対する特異的抗体を用い、シリア放出エクトソームに含まれる当該タンパク質の検出にも成功した。本成果は、アーティファクトを完全に排除した実験および検出系による仮説の検証を目指す本研究の目的を達成した点で極めて重要なものである。また、内在性タンパク質に対する抗体に頼らず興味対象タンパク質を検出することを可能にした点も、技術的に意義深い。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究実施計画で挙げた3項目(エクソソーム関連遺伝子ノックアウト細胞の樹立、シリア放出エクトソームのプロテオミクス解析、シリア関連疾患に関係する遺伝子のノックアウト細胞樹立)を達成した上に、以下の二点の進展があった。 1)シリアからのエクトソーム放出が刺激依存的に増加することを示した。 2)エクトソームに含まれる内在性タンパク質に蛍光タンパク質をノックインし、過剰発現に依存しないライブ観察系や内在タンパク質特異的な抗体を必要としない検出系を確立した。 以上の理由から「当初計画以上に進展している」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、本年度の計画以上の進展を軸に以下の3項目を実施する。 1)本年度に樹立した蛍光標識シリア放出エクトソーム局在タンパク質を内在性に発現する細胞を用い、シリアからのエクトソーム放出のライブイメージングを行う。さらに、同細胞の培養上清をフローサイトメーターで解析し、シリアから放出されたエクトソームの選択的分取に挑戦する。 2)本年度に実証した刺激以外にシリアからのエクトソーム放出を誘導する刺激がないか探索する。解析対象の刺激としては、成長因子や栄養因子、浸透圧変化、ブドウ糖濃度変化、細胞興奮刺激、炎症刺激などを想定している。本年度に樹立した遺伝子ノックアウト細胞や蛍光標識シリア放出エクトソームタンパク質発現細胞を活用し、エクトソームの放出を生化学的およびライブ観察で評価する。 3)上記2)で新たに同定されるシリアからのエクトソーム放出を促進する刺激について、本年度と同様、あるいは上記1)により達成されるフローサイトメーターによりエクトソームを濃縮し、刺激依存的に変化する(あるいは、変化しない普遍的な)エクトソーム内容物をLC-MS/MSを用いたショットガンオミックスにより解析する。解析対象分子種は、本年度と同様にタンパク質とするが、フローサイトメーターによるエクトソームの濃縮精製に成功した場合、エクトソームの脂質組成を探索するリピドミクス解析や、小分子代謝物を探索するメタボロミクスにも挑戦したい。 4)上記1)から3)が順調に進んだ場合、異なる刺激で共通してエクトソームに含まれるタンパク質をコードする遺伝子をCRISPRシステムでノックアウトし、エクトソーム放出に寄与する分子の同定に挑戦したい。
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