2015 Fiscal Year Annual Research Report
ペクチンのホウ酸架橋による細胞伸長の制御
Publicly Offered Research
Project Area | Plant cell wall as information-processing system |
Project/Area Number |
15H01222
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
三輪 京子 北海道大学, 地球環境科学研究院, 准教授 (50570587)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 植物細胞壁 / ペクチン / ホウ素 / 変異株 / シロイヌナズナ |
Outline of Annual Research Achievements |
植物の一次細胞壁に存在するペクチン質多糖ラムノガラクツロナンII(RG-II)はホウ酸によって分子間架橋され、この架橋が細胞伸長に必須であることが明らかにされている。本研究では、RG-II架橋率が低下したときに起こる細胞伸長抑制の分子機構の解明を目指し、RG-II架橋率低下による細胞伸長の抑制に必要な分子の同定を目的とした。 RG-IIのホウ酸架橋低下によって根の細胞伸長が抑制されるホウ酸欠乏環境において、主根伸長の抑制が緩和された「ホウ酸欠乏低感受性シロイヌナズナ変異株」を単離し、原因遺伝子の同定と生理学的な解析を進めた。 独立な2株の原因変異が、真核生物に広く保存された機能未知の膜タンパク質の機能欠損・発現抑制であることを確定させた。本変異株は低ホウ酸濃度条件下で野生型株と比較して細胞の長さおよび根の長さは増加した。一方、低・高ホウ酸濃度条件において根全体の乾燥重量は顕著に低下し、細胞壁に存在するホウ素濃度は低下を示した。これより原因遺伝子は正常な成長に必須である因子であり、同時にホウ素に対する感受性を変化させる因子であることを明らかにした。 さらに、2株の原因変異が、ペクチンの主鎖であるホモガラクツロナン合成を担うと予想される酵素の機能欠損・低下であることを見出した。本変異株では細胞壁に結合するホウ素濃度が低下したが、RG-IIの相対的なホウ酸架橋率は野生型株と比較して違いが認められなかった。この結果から、本変異株ではRG-II量の低下が引き起こされ、少ないホウ素量でRG-II架橋率および細胞伸長・成長が維持されていると推察された。これより、架橋されたRG-IIの絶対量ではなく、RG-IIの相対的な架橋率または架橋されていない単量体のRG-IIが細胞伸長を決定する可能性が考察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
RG-II架橋率低下による細胞伸長の抑制に必要な分子の同定を目的とした変異株探索では、ホウ酸欠乏条件下における主根伸長抑制の緩和を顕著に示す独立な複数の変異株の原因遺伝子の遺伝学的な証明に至った。原因遺伝子のひとつは、真核生物に高く保存されているものの植物ではその生理機能が全く明らかにされていない遺伝子であった。本研究は植物での本遺伝子の生理機能を初めて明らかにする成果であり、細胞壁ペクチン合成や機能維持に関わる新たな分子の同定となることが期待された。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度も引き続き、ホウ酸欠乏低感受性変異株の生理学的および遺伝学的な解析を進め、RG-II架橋率低下による細胞伸長の抑制に必要な分子を明らかにする。原因遺伝子が確定した変異株に対しては、細胞壁のRG-II量およびホウ酸架橋率を測定し、ホウ素欠乏に対する感受性が低下した要因を明らかにする。
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