2015 Fiscal Year Annual Research Report
受容体による環境情報感知機構とゲノム編集による機能解明
Publicly Offered Research
Project Area | Plant cell wall as information-processing system |
Project/Area Number |
15H01245
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
刑部 祐里子 徳島大学, 農工商連携センター, 特任准教授 (50444071)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | アポプラストシグナル / 受容体型キナーゼ / 重複遺伝子 / ゲノム編集 |
Outline of Annual Research Achievements |
植物アポプラストには様々な化学的・物理的な刺激が存在しており、植物細胞膜局在する受容タンパク質がこれらのシグナルを細胞内へ情報伝達する。特に、水分ストレスに関連するアポプラストシグナルは多様かつ複合的であり、我々はそのシグナル伝達機構を明らかにするために、シロイヌナズナにおいて水分ストレス応答に重要な組織やストレス初期に特異的な発現を示す受容体型キナーゼ(RLK)遺伝子を探索した。その結果、システインリッチリピートCRR 型RLK(CRK)および細胞壁結合に関わるとされる細胞外ドメインを持つCrRLK遺伝子群を選抜した。これらのRLK遺伝子群の中には、相同性遺伝子がゲノム上で重複して存在するクラスター構造を示していた。これらの重複性遺伝子は水分ストレスに対して共調的発現を示しゲノムレベルでの機能調節が推定された。重複遺伝子は遺伝的多様性をもたらし生物の進化に重要な役割を持っていると考えられている。しかし、これまで機能欠損を解析するための多重変異体作製は困難であった。本研究は、RLK重複遺伝子群による植物アポプラストシグナル伝達機構解明のために、我々が構築したCRISPR/Cas9 を用いたゲノム編集技術によりRLK重複遺伝子のゲノム改変を行い、受容体キナーゼによる細胞壁環境情報伝達機構を明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
シロイヌナズナにおいて水分ストレス応答に重要な組織やストレス初期に特異的な発現を示す受容体型キナーゼ(RLK)遺伝子を探索した結果、システインリッチリピートCRR 型RLK(CRK)および細胞壁結合に関わるとされる細胞外ドメインを持つCrRLK遺伝子群を選抜した。これらのRLK遺伝子については、ゲノム上に相同性遺伝子が重複して存在するクラスター構構造を示し、水分ストレスに対して共調的発現を示すことが明らかになった。これらのRLK遺伝子について、ゲノム編集による多重変異体の作出を進めた。まず、植物の高効率ゲノム編集ツールを開発するために、gRNA設計が可能なwebツール、GFPレポーターの発現によるCas9発現レベルのモニタリングカセット、シロイヌナズナなどのin-planta法による形質転換系に最適化された配偶子および茎頂特異的発現プロモーターによるCas9発現カセットを構築した。また、変異導入効率、および変異配列の網羅的解析実験系として、マイクロチップ自動電気泳動装置(MultiNA、島津製作所)および次世代シーケンサー(Hiseq、イルミナ)による検出系を確立した。配偶子および茎頂特異的特異的発現プロモーターを用いたCas9ベクターを用いて、予備的に実験を行った結果、bi-allelic 変異体を高効率で得ることが可能であることが明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
1) シロイヌナズナにおいて水分ストレス応答に重要な組織やストレス初期に特異的な発現を示す受容体型キナーゼ(RLK)遺伝子であるCRK遺伝子群、および細胞壁結合に関わるとされる細胞外ドメインを持つCrRLK遺伝子群のゲノム構造と詳細な発現特異性を明らかにする。 2) クラスター構構造を示すRLK遺伝子について、配偶子および茎頂特異的特異的発現プロモーターを用いたCas9ベクターによりbi-allelic 変異体を作製し、多重変異体を確立する。得られた新規変異植物体について、乾燥などの環境ストレス応答性などの生理応答を解析し、重複性遺伝子欠損変異による環境ストレス応答性への影響を解明する。 3) それぞれのRLK遺伝子が感知するアポプラストシグナルおよび、下流のシグナル伝達経路を解明する。
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Research Products
(10 results)