2015 Fiscal Year Annual Research Report
RNAウイルス複製場の形成と崩壊における核内コンピテンシーの解明
Publicly Offered Research
Project Area | Molecular basis of host cell competency in virus infection |
Project/Area Number |
15H01259
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
朝長 啓造 京都大学, ウイルス研究所, 教授 (10301920)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ウイルス感染 / 細胞核 |
Outline of Annual Research Achievements |
すべてのウイルスは、細胞内で安全かつ効率的に複製するために独自の複製場を形成している。RNA ウイルスの多くは細胞質で複製し、封入体あるいはウイルス・ファクトリーとよばれる複製場を形成する。これまでの研究から、マイナス鎖RNA ウイルスの複製場の形状やその形成機構は、きわめて多様であることがわかっている。しかしながら、RNA ウイルスが独自の複製場の形成に細胞のどのような機構を利用しているのか、また複製場の詳細な構造的基盤、そしてウイルス複製における詳細な役割については明らかになっていない。マイナス鎖RNA ウイルスであるボルナ病ウイルス(BDV)は、核内で持続感染する。これまでに、BDV がvSPOT と呼ばれる複製場を形成することを明らかにしてきた。vSPOTは、クロマチンを足場に構造を保っているが、細胞分裂期には崩壊し、ウイルスRNP を染色体上に拡散させる。すなわち、vSPOT の詳細な解析は、核内でのウイルスRNP のダイナミズムと核内コンピテンシーを明らかできると考えられる。本研究は、細胞核におけるBDV の複製場の構造的基盤を宿主因子との関与を含め解明することを目的とした。超解像顕微鏡法により、vSPOT内のBDV蛋白質の局在分布が明らかとなった。N蛋白質はRNPを形成し、vSPOTの外殻を構築していた。また、P蛋白質やM蛋白質はvSPOTの内部に網目状に局在していることが明らかとなった。このことから、BDVの複製はvSPOTの辺縁部で行われている可能性が示された。また、vSPOTの表層には直径約100 nmの細孔が空いており、vSPOT内部への物質の選択的透過性への関与も示唆された。一方、BDV Nと結合する核内因子を同定した。このタンパク質の欠損はウイルス複製にも影響を与えることが示され、宿主因子との分子競合が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度に計画をしていた超解像顕微鏡を用いる実験に関しては概ね終了している。また、宿主因子も同定しており論文も執筆した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、BDVと宿主因子の相互作用を明らかにして核内における宿主コンピテンシーの解明につなげる。具体的には昨年度同定したRBMXに加え、宿主のDNAダメージ修復反応に関与する因子とウイルス複製との関連性を明らかにしていく。
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Research Products
(3 results)