2015 Fiscal Year Annual Research Report
運動タンパク質素子による原形質流動の自律的構築
Publicly Offered Research
Project Area | Harmonized supramolecular machinery for motility and its diversity |
Project/Area Number |
15H01309
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
伊藤 光二 千葉大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (50302526)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ミオシン / アクチン / 原形質流動 / モータータンパク質 / 自律的組織化 |
Outline of Annual Research Achievements |
高等植物の細胞膜近傍ではアクチン繊維が細胞膜に沿って配向し, その極性もほぼそろっている。小胞体に結合したミオシンは配向と極性が揃ったアクチン繊維に沿って一定の方向に動くので,植物細胞では方向をもった大きな流れ(原形質流動)がおきている。細胞膜に沿ってアクチン繊維が一定の極性をもって配向するのはどのような機構によるのであろうか?その有力なモデルとして,ミオシンとアクチン繊維および小胞体の3つの分子マシナリーが相互作用する結果,自律的にアクチン繊維が極性を揃えて配向し,運動超分子マシナリーである原形質流動装置が構築される説が有力となっている。 本研究では,まず,植物細胞を模した幅,深さ,直径がそれぞれ10 um, 10um, 100 umのリング状の基板を以下a~dの要領で作成した。a: Cad (コンピュータ支援設計)で設計図書く。b: Cadで設計した図をクロム,レジストコートガラスにレーザー描画装置で描いたマスクを作製する。d:マスクをモールドの上に乗せ,UV照射によりマスク描画に沿ってモールドを溶かしたモールド型を作製する。e:モールドの型に,PDMSを入れて固めPDMS型を作る。f:PDMS型に紫外線硬化樹脂NoA61をいれて,紫外線で照射してNoA61による基板を作製する。以上の工程で作製したリング状のNoA61基板にシロイヌナズナのミオシンを結合させ,そこにシロイヌナズナのアクチン繊維, ATPを入れたところ,アクチン繊維の濃度が細胞内と同程度(~0.5mg/ml)のときは,リングに沿ったアクチン繊維の運動が見られた。しかし,その方向は両方向にほぼ均等で,1方向性の運動は見られなかった。アクチン繊維は植物細胞の中では束化している。そこで,束化を試みることにした。メチルセルロースで束化したところ時間とともに方向が揃っていき,驚くべきことに1時間後には1方向性の運動が観察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アクチン繊維が極性を揃えて配向しなければ,ミオシンはオルガネラを結合したままランダムに動き,1方向性の原形質の運動,つまり原形質流動を引き起こすことはできない。原形質流動形成の最も鍵であり,また,最も謎は,「どのようなメカニズムにより細胞内でアクチン繊維が極性を揃えるか」である。最近,有力となっている仮説の1つにアクチンとミオシンの相互作用によってアクチン繊維の方向を揃えるという「アクチン-ミオシン自律配向モデル」がある。この仮説を検証し,また,この仮説が正しいときには,そのモデルが成り立つための条件を明らかにするために,植物細胞を模倣した微小空間を作製し,そこにアクチン,ミオシン, ATPをいれた。H27年度の研究により,驚くべきことに,リング状の微小空間と,アクチン繊維の束化という必要条件がみたされれば,アクチン繊維の1方向の運動を形成することは可能ということがわかった。運動はリングに沿っていたが,その方向は,最初はランダムであった。しかし,時間を追うごとに方向が揃ってきて1時間後には1方向の運動になった。アクチン繊維の横方向の相互作用はアクチン繊維が同じ方向に運動しているときは強く,そのため方向が揃っていくと考えられる。つまり,H27年度の研究により,もっとも原形質流動にとってもっとも重要であったアクチン繊維の配向はアクチンとミオシンの相互作用によってアクチン繊維の方向を揃えることがわかった。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 1方向性のアクチン繊維の運動にとって,アクチン繊維の束化が必要十分条件であるか? H27年度はメチルセルロースにより人工的にアクチン繊維を束化することにより1方向性のアクチン繊維の運動が可能になることを明らかにした。H28年度はまず,「細胞空間を模したリング状の微小空間における1方向性のアクチン繊維の運動にとって,アクチン繊維の束化が必要十分条件であるかどうか」を検証する。植物細胞内にあるアクチン繊維は束化しているが,それはアクチン繊維束化タンパク質のvillinによる。そこで,villinで束化したときにもメチルセルロースのときと同様の1方向性のアクチン繊維の運動が起きるかどうかを調べる。 2. 逆噴水型の原形質流動の誘導 「周回型の原形質流動」がおきている細胞と同様にリング状の微小空間の基板上にアクチン繊維を束化し,ミオシンとATPを加えたときは,「周回型の原形質流動」と同様のアクチン繊維の配向,運動がおきた。植物には周回型の原形質流動以外にさまざまな型の原形質流動があるが,原形質流動の型は細胞質の形状と対応している。そこで,「逆噴水型の原形質流動」がおきている細胞質の形状を模した微小空間を作製したときに「逆噴水型の原形質流動」と同様のアクチン繊維の配向,運動が起きるか検証する。以上の1, 2の研究により,「空間の配置にそってアクチンとミオシンがが,自律配向モデルすることにより原形質流動が起きる」という仮説を実証する。 3. 人工的原形質流動の完成 1,2で作製した方向が揃ったアクチン繊維に蛍光標識したビーズを結合したミオシンを導入し,ビーズの動きを観察する。ビーズが原形質流動をおこしている小胞,オルガネラと同様に,1方向性の運動をしていたら,原形質流動を人工的に作製し得たといえる。
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