2015 Fiscal Year Annual Research Report
極限環境下にある深海微生物の生存戦略イメージング
Publicly Offered Research
Project Area | Harmonized supramolecular machinery for motility and its diversity |
Project/Area Number |
15H01319
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
西山 雅祥 京都大学, 白眉センター, 特定准教授 (10346075)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 高圧力顕微鏡 / 深海微生物 / 運動マシナリー / ナノバイオ / 分子機械 / 好冷好圧菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者はこれまでから高圧力環境にある生物試料を実時間で観察できる高圧力顕微鏡の開発を行ってきた。この装置を利用すると、地球上で最も深い領域であるマリアナ海溝最深部(約11,000m)の静水圧を超える圧力環境を研究室で作り出すことができる。平成27年度は、海洋研究開発機構(JAMSTEC)が有人潜水調査船「しんかい6500(最大潜航深度6,500m) により深海底から採取してきた海洋細菌の運動マシナリーを調べる研究を行った。Shewanella violacea DSS12は琉球海溝深度5,000mから採取された代表的な海洋細菌である。8 ℃, 30 MPaを生育至適とし、70MPa程度の高圧環境にまで良好に生育できることから好圧菌のモデル生物とされている。また、これまでの研究によりゲノム解析も達成されている(4.8 Mb)。低温(8℃)、大気圧環境下でこの菌体を対数増殖期まで培養し、高圧力環境下で遊泳速度の圧力依存性を調べた。8℃, 0.1MPa条件下では、約半分の菌体が遊泳運動を行っており、その速度は約16 μm/sであった。圧力の増加に伴い、泳ぐ菌体の割合と速度は単調に減少し、100 MPaで共に約半分になった。大気圧環境下で生育する大腸菌は23℃, 80MPaでは完全に遊泳運動を停止したことから、圧力変化に対するDSS12株の遊泳運動能の変化は緩やかであり、高圧力環境への適応が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今回実験に利用したDSS12株は大気圧環境でも培養可能であり、その生育能力は圧力に対しても緩やかに変化する事が知られている。この知見は、本研究から得られた運動能の圧力依存性ともよく似ており、海洋細菌の運動マシナリーが高圧力環境に適応していることを示唆するものとなっている。また、このDSS12株の運動マシナリーを駆動するエネルギー源の特定は重要な課題であるが、予備実験からはNa濃度駆動型であることが示唆されており、おおむね、研究は良好に進んでいると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの実験ではDSS12株を大気圧環境で培養してきたのだが、遊泳運動を示す菌体の割合が約半分と少ない状況にある。今後は、培地組成、ならびに、培養時の温度や圧力を変えることで、海洋細菌の運動マシナリーの研究に適した培養条件を検討したい。
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