2015 Fiscal Year Annual Research Report
クロマチン構造と共役した転写因子動態の分子シミュレーション研究
Publicly Offered Research
Project Area | Integral understanding of the mechanism of transcription cycle through quantitative, high-resolution approaches |
Project/Area Number |
15H01351
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高田 彰二 京都大学, 理学研究科, 教授 (60304086)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | クロマチン / 転写因子 / 分子シミュレーション / ChIP-seq / ヌクレオソーム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、1)独自の粗視化分子シミュレーション技法にChIP-seqのデータを取り込む新しい方法を開発し、2)クロマチン構造が転写因子動態に及ぼす影響、およびその逆を、分子構造に基づいて高い時間空間分解能で明らかにすることである。 1)粗視化分子シミュレーション技法にChIP-seqのデータを取り込む方法の開発:当初、in vivoのChI-seqデータを取り込む予定であったが、これでは転写因子と様々なDNA塩基配列間の相対的親和性しか見つもつことが出来ないこと、in vivoデータはクロマチン環境を複雑に反映した結果であることから、必ずしも取り込むのに最適なデータではないことが判明した。in vitroの蛋白質DNA結合データとして、Protein-binding microarrayのデータがPosition-weight matrix (PWM)の形でUniPROBEデータベースから取得できるため、本研究ではこれを利用することに変更した。PWMデータを用いた分子シミュレーションを実現するための関数形を検討し、アミノ酸ーヌクレオチドの距離に加えて、3つの角度情報の積を加味した関数が適切であると結論付けた。 2)まず、2本鎖DNA上にさまざまな蛋白質が結合している混雑環境が、転写因子の拡散運動にどのような影響を与えるか、の検討を開始した。2本鎖DNA上に、障害物としてEcoRIを結合させた初期条件から、小型の転写因子(正確には、そのDNA結合ドメイン)の動態を分子シミュレーションにより解析した。転写因子は、障害物であるEcoRIを飛び越えてDNA上を拡散することが極めて難しく、EcoRIの結合部位は拡散にとって大きな障害となる。ただし、塩濃度がある程度以上高い場合は、EcoRIを超えて拡散を起こすことが、まれにではあるが実現した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
分子シミュレーション技法にChIP-seqのデータを取り込む手法の開発については、当初予定していたChIP-seqではなく、UniPROBEによるin vitroのprotein binding microarrayデータを利用することに変更したために、最初やや遅れたが、繰越制度を利用し、結果として当初目標としていた蛋白質DNA結合実験データを取り込んだ分子シミュレーションを実現することが出来た。全体としてみるとおおむね順調である。
|
Strategy for Future Research Activity |
開発に成功した蛋白質DNA結合実験データを取り込んだ分子シミュレーション技法を、転写因子動態研究に適用する。転写因子が、配列非特異的相互作用によりDNA上をスライディングして配列探索を行い、特異的相互作用によって認識部位に結合停留する動態を分子シミュレーションによって分析する。ゲノム配列上、機能的な認識部位の近傍には多くの擬特異的配列も存在しており、それにより探索はより難しくなると予想される。
|
Research Products
(11 results)