2015 Fiscal Year Annual Research Report
細胞分化可塑性を規定する染色体高次構造の解析
Publicly Offered Research
Project Area | Integral understanding of the mechanism of transcription cycle through quantitative, high-resolution approaches |
Project/Area Number |
15H01352
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山本 拓也 京都大学, iPS細胞研究所, 助教 (60546993)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ゲノム / 発生・分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
「細胞の分化能力」を染色体の高次構造の制御という観点から明らかにすることが本研究の目標である。多能性幹細胞の重要な性質の一つである多分化能の本質は、幹細胞で発現していない遺伝子群が分化刺激に対して、適切に転写を開始できることにある。したがって、多能性幹細胞で発現していない分化関連遺伝子群がどのような制御を受けて転写を開始する準備を整えているのかを知ることは重要であるが、解析はほとんど進んでいない。本研究では、多能性幹細胞において、分化関連遺伝子群の転写制御領域の染色体高次構造を同定し、その制御メカニズムを明らかにすることにより、幹細胞の重要な性質を規定する根本原理に迫ることを目的とする。
本年度は、ある特定の注目する染色体領域と相互作用する領域を一度に高精度で同定するためMultiplexed 3C-seq法の開発を行なった。さらに、本手法を用いて、体細胞初期化前後で分化関連遺伝子群の染色体高次構造を決定した。結果、初期化前後で遺伝子の発現が認められない領域においても、大きく染色体の構造が変化する場合があることが観察された。また、種々のバイオインフォマティクスによる解析により、多能性幹細胞において、分化関連遺伝子の特徴であるバイバレント修飾をプロモーター領域にもつ遺伝子群が3次元空間上で近傍に位置しやすいということを明らかにした。この観察は、多能性幹細胞では、外部からの分化刺激に対して素早く応答するため分化関連遺伝子群が3次元空間レベルで制御されている可能性があることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、Multiplexed 3C-seq法の開発を行ない、独自のパイプラインを構築することによって体細胞初期化前後における分化関連遺伝子群の染色体高次構造を同定した。また、多能性幹細胞における分化関連遺伝子群の染色体高次構造の特徴も見出しており、初年度の目標は達成できている。
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Strategy for Future Research Activity |
1. バイオインフォマティクスを用いた染色体高次構造に関連する因子の同定 すでに申請者が行っているトランスクリプトーム解析と比較することによって、転写とゲノム構造における関連性を検討する。また、すでにpublishされている種々の転写因子結合部位のデータを用いてゲノムの構造変化と転写因子の結合の間にどのような関係性があるのかを詳細に解析する。また、ヒストン修飾やDNAメチル化についても既に多くのデータが蓄積されているので、公開されているデータを利用し、様々なエピジェネティック修飾と高次構造の関連性を調べる。さらに、特定のゲノム構造を持つ領域に保存されたDNA配列が存在するかをin silicoの解析により明らかにする。
2. 空間制御因子の細胞運命変換に及ぼす影響の検討 上記で同定した空間制御因子が、ゲノム高次構造さらには細胞運命変換過程にどのような影響を与えるのかを強制発現や機能阻害実験により明らかにする。
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Research Products
(3 results)