2015 Fiscal Year Annual Research Report
活性化ヘム検出に立脚した活性酸素誘導性細胞死の評価系開発
Publicly Offered Research
Project Area | Homeostatic Regulation by Various Types of Cell Death |
Project/Area Number |
15H01372
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
佐藤 伸一 東京工業大学, 資源化学研究所, 助教 (20633134)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ヘムタンパク質 / 活性酸素 / タンパク質ラベル化 / チロシン残基 / peroxidase |
Outline of Annual Research Achievements |
ある種の細胞死と活性酸素の深い関連性が近年注目されている。例えば、フェロトーシスは脂質の過酸化反応がその細胞死誘導に密接にかかわることがわかっており、がん幹細胞への選択的細胞死誘導への応用が注目されている。そのような細胞内の活性酸素、酸化ストレスの代謝経路は未だ不明であるが、細胞内の鉄が重要な役割を持つことが示唆されている。申請者らは生体に存在するヘムタンパク質の鉄原子の酸化的活性化に応じて触媒される化学的なタンパク質修飾反応を見出しており、これを、酸化ストレス誘導性の細胞死の分子機構解明に活用することを目的に研究に着手した。 H27年度開始までに、鉄ポルフィリン錯体の一種であるheminを触媒としたチロシン残基修飾法を見出していた。そこで、細胞内の鉄原子の酸化状態に応答する反応の適用性を調べるため、種々のヘムタンパク質を基質もしくは触媒として検討した。その結果、生物学の分野で広く使われるHRPが本反応の優れた触媒として機能することが判明した。また、細胞破砕液や血液由来サンプルでも検討したところ、特定の生体由来ヘムタンパク質においても本ラベル化反応が促進されることがわかった。 細胞内で活性化するヘムタンパク質を網羅的に解析する上では、鉄の酸化状態に応じて効率的にタンパク質ラベル化反応を誘導する修飾剤が望まれる。そこで、細胞内に強制的にperoxidaseを発現させた細胞用いて、最適な修飾剤の化学構造の選定を試みた。種々のラジカル応答性の低分子化合物プローブを評価したところ、細胞膜透過性が高く、peroxidase活性に応答してラベル化される修飾剤構造とその構造機能性相関情報を得るに至っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究開始のH27年度目標は、細胞膜透過性があり、細胞内環境において、特定のヘムタンパク質の酸化状態に応答してラベル化されるような修飾剤を選定することであった。研究開始当初はどのようなヘムタンパク質がラベル化触媒として適用できるのかが不明であり、細胞内のヘムタンパク質のラベル化を効率的に評価できるような実験系が無かった。種々のヘムタンパク質に対する反応性を精査し、peroxidaseで強くタンパク質ラベル化が促進できる修飾剤を見出すことに成功した。その結果を11月の国際学会で発表を行ったところ、peroxidaseを細胞内で発現できる実験系を持つ海外の研究者と繋がりを持つことができ、細胞内に発現したperoxidaseを用いた修飾剤スクリーニングの開発に至った。本技術によって、本課題遂行において鍵となる“細胞内環境において鉄の酸化状態に応答するタンパク質修飾プローブ”の探索に有用な実験手法を構築することが出来た。 現在では、細胞内環境で機能するプローブ構造を選定中であるが、上記の評価系構築が行えたことによって、研究開始から想定していたよりも幅広く多様なラジカル反応性候補分子を評価・選定でき、プローブ構造間の細胞膜透過性、鉄酸化状態応答性を比較することに成功している。よって、概ね順調に進行していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度開始までの研究成果によって、本反応は特定のperoxidase活性を持つヘムタンパク質によって強く触媒されることがわかっている。さらに、微量の細胞内ラベル化タンパク質を検出する手法についてもほぼ確立している。 そこで、今後は、本反応が細胞死誘導時における細胞内のヘムタンパク質のラベル化に適用するための条件を検討する。また、それと同時に、よりラベル化効率の高い修飾剤を見出すべく、これまでに行ってきた修飾剤の構造活性相関情報を基に、細胞内環境でも高い修飾効率を示すプローブ分子の作成を試みる(本学修士課程1年生)。細胞を用いた実験に関しては申請者自らが実験することを計画する。 具体的には、細胞に過酸化水素やフォロトーシス誘導剤であるエラスチンを処理したときに、細胞内でどのようなヘムタンパク質修飾反応が誘導されるかを追跡する。本研究で開発する手法はヘムタンパク質の酸化状態を動的に捉えることが出来る手法であり、これまでにないこのようなアプローチによる解析手法は、新規な細胞死制御機構の解明につながる基盤技術になり得る。 また、本課題の成果として、タンパク質修飾効率の高いperoxidaseを細胞内に一過性に発現させる実験系の構築に成功している。今後、特定の細胞死刺激誘導時における細胞内強制発現peroxidaseタンパク質と、細胞内の内在性タンパク質の反応性の比較を行う。なお、細胞内の内在性のヘムタンパク質のラベル化の効率的なラベル化が困難な場合にも、peroxidase強制発現細胞でのラベル化条件を細胞死シグナル解析に活用することを目的に研究を展開する。
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Research Products
(18 results)