2015 Fiscal Year Annual Research Report
網膜神経細胞死に起因するシグナルネットワークにおける小胞体ストレスの重要性
Publicly Offered Research
Project Area | Homeostatic Regulation by Various Types of Cell Death |
Project/Area Number |
15H01374
|
Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
宝田 美佳 金沢大学, 医学系, 助教 (40565412)
|
Project Period (FY) |
2015-06-29 – 2017-03-31
|
Keywords | 神経細胞死 / 小胞体ストレス / ミュラー細胞 / 網膜 / グリア |
Outline of Annual Research Achievements |
従来の神経細胞死研究では、多くが傷害神経自身に焦点をあてており、変性した神経細胞からどのようなシグナルが生体において派生していくかはほとんど解明されていない。我々はこれまでに、中枢神経系病態において小胞体ストレス応答がグリア細胞を介し神経細胞死を制御する可能性を見出している。本研究では、複雑な神経回路を持つ中枢神経系の傷害をより単純化するため、傷害神経と下流神経を独立して解析するツールとして視神経挫滅モデルを用い、小胞体ストレス応答の基幹転写因子ATF6alpha欠損マウスを用いて小胞体ストレスの亢進条件とした。これにより、傷害神経、下流神経とその周囲グリア細胞間のシグナルネットワークにおける、小胞体ストレス応答の重要性とその分子機構を明らかにすることを目的とする。本年度は、小胞体ストレス亢進条件下における視神経挫滅モデルの組織学的病態解析を行った。まず、野生型マウスの解析から、視神経損傷後に小胞体ストレス応答が上昇すること、網膜における主要なグリア細胞であるミュラー細胞の活性化がおこること、分泌性タンパク質の発現上昇や細胞内シグナル伝達の活性化が起こることを見出した。また、ATF6alpha欠損マウスでは視神経傷害後の網膜神経節細胞死が亢進していることが明らとなった。さらに、小胞体ストレス亢進条件下では、ミュラー細胞の活性化が減弱しており、分泌性タンパク質の発現上昇や早期に惹起される細胞内シグナル伝達も減弱していることが明らかとなった。これらの結果から、視神経傷害後の網膜神経細胞死において、小胞体ストレス応答が重要な役割を果たす可能性が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度の研究では、視神経傷害後に小胞体ストレス応答が惹起されること、応答の基幹転写因子であるATF6alphaの欠損マウスでは視神経傷害後の網膜神経節細胞死が亢進していることを明らかにすることができた。さらに、小胞体ストレス亢進条件下では、ミュラー細胞の活性化が減弱しており、分泌性タンパク質の発現上昇や早期に惹起される細胞内シグナル伝達の活性化も減弱していることが明らかとなった。これらから、網膜神経細胞死における小胞体ストレス応答の重要性を示すことができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、視神経傷害後の網膜内におけるシグナル伝達の分子機構を詳細に進めると共に、網膜神経節細胞の標的神経核における神経細胞とグリア細胞間のシグナルネットワーク解析を行う。小胞体ストレス応答に制御される変性神経とグリア細胞間のシグナルについて候補分子を解析するとともに、網羅的解析を行い標的分子を同定する。さらに、小胞体ストレスの軽減が神経細胞死の抑制につながるか、in vitroにおけるケミカルシャペロンを用いた救済実験を実施する予定である。
|
Research Products
(5 results)