2015 Fiscal Year Annual Research Report
caspase-8と10それぞれが阻害する二種類の新規細胞死の解析
Publicly Offered Research
Project Area | Homeostatic Regulation by Various Types of Cell Death |
Project/Area Number |
15H01376
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
米原 伸 京都大学, 生命科学研究科, 教授 (00124503)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 細胞死 / caspase-8 / caspase-10 |
Outline of Annual Research Achievements |
『RIPK3のみに依存するγ型インターフェロン(IFN-γ)誘導新規計画的ネクローシス (caspase-8が抑制)』について、RIPK1とRIPK3の両方に依存してMLKLが実行因子として機能するネクロプトーシスとの異動を解析し、RIPK1は必要としないが RIPK3とMLKLを必要とすることを明らかにした。また、caspase-8のプロテアーゼ活性とアダプター活性が失われた細胞ではIFN-γ刺激によって新規ネクローシスが誘導され、caspase-8のプロテアーゼ活性を失っているがアダプター活性を有する細胞ではIFN-γ刺激によってネクロプトーシスが誘導されることを示した。 『caspase-10 の発現抑制が、がん細胞特異的に誘導する新規細胞死』については、caspase-10のアイソタイプであるAとDの両分子の発現が細胞死の抑制に必須であること、また、AとD両分子ともプロテアーゼ活性は必要無いことが示された。さらに、Tリンパ腫由来Jurkat細胞ではcaspase-10の発現抑制によってまずアポトーシスが誘導され、それに引き続き新規細胞死が誘導されること、大腸がん由来Hct116細胞ではアポトーシスは誘導されずに新規細胞死のみが誘導されることを示した。また、この新規細胞死はRIPKやMLKLに依存せず、位相差顕微鏡下にはネクローシスであることが示唆された。RIPKに依存しない新規のプログラムネクローシスであると考えられ興味深い。 一方、caspase-8の発現を抑制したES細胞において胚葉体形成によって分化を誘導する際に、レチノイン酸(RA)刺激によって細胞分化だけでなく非アポトーシス細胞死が強力に誘導されることを見いだした。この細胞死誘導の分子機構を明らかにすることも新たな研究目的とすることとした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
『RIPK3のみに依存するγ型インターフェロン(IFN-γ)誘導新規計画的ネクローシス (caspase-8が抑制)』について、RIPK1に依存するネクロプトーシスにはcaspase-8のアダプター活性が必要であることを示し、caspase-8が存在しない場合にはRIPK1に依存しない計画的ネクローシスが誘導されることを示し、caspase-8がプロテアーゼ活性だけでなくアダプター活性によってもネクローシスを調節することを新たに示した。今後は、そのメカニズムを明らかにする必要がある。 『caspase-10 の発現抑制が、がん細胞特異的に誘導する新規細胞死』では、caspase-10のプロテアーゼ活性ではなくアダプター活性ががん細胞特異的な新規細胞死を抑制しているという新しい知見を得られた。今後はcaspase-10の機能と新規細胞死の分子メカニズムを解明する必要がある。 また、新たにES細胞に胚葉体を形成させて分化を誘導する際、caspase-8の発現抑制下に分化誘導因子RAがRIPK1、RIPK3とMLKLに依存したネクロプトーシスを誘導することを見いだした。RAは胚葉体を形成させていない状況下では主にアポトーシスを誘導するので、ネクロプトーシスが誘導されることは興味深く、その分子機構を解明する必要がある。
|
Strategy for Future Research Activity |
『RIPK3のみに依存するγ型インターフェロン(IFN-γ)誘導新規計画的ネクローシス (caspase-8が抑制)』について、RIPK1のかわりにRIPK3を活性化させる新たなネクローシス誘導因子の同定を行う。方法としては、1)RIPK3の活性化をモニターするシステムを構築したので発現クローニング法、2)RIPK3に会合する分子を共免疫沈降法と質量分析法を駆使する。 『caspase-10 の発現抑制が、がん細胞特異的に誘導する新規細胞死』では、caspase-10のAとDが協調してアポトーシスやネクローシスを阻害する分子機構を明らかにする。具体的には、caspase-10 AとDに会合する分子を共免疫沈降法と質量分析法を駆使して明らかにする。 また、ES細胞に胚葉体を形成させて分化を誘導する際、caspase-8の発現抑制下に分化誘導因子RAがネクロプトーシスを誘導する分子機構も明らかにする。
|