2015 Fiscal Year Annual Research Report
活性酸素シグナルのユビキチン化を介した新たな制御システムとストレス応答機構の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Oxygen biology: a new criterion for integrated understanding of life |
Project/Area Number |
15H01391
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
松沢 厚 東北大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (80345256)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 活性酸素 / シグナル伝達 / ストレス応答 / ユビキチン化 / キナーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、ASK1特異的なユビキチン化酵素Roquin-2と脱ユビキチン化酵素USP9Xが活性酸素刺激に応じて酸化ストレス応答シグナルを制御する仕組みを明らかにすること、Roquin-2とUSP9XによるASK1活性化のバランス制御を介したストレス応答誘導機構の解明、また、ASK1活性化し因子として新規同定したユビキチン化酵素TRIM48の基質同定とASK1活性化機構の解明を中心に検討を行った。 Roquin-2とUSP9Xが活性酸素刺激に応じて酸化ストレス応答シグナルを制御する分子メカニズムについては、それらのエフェクター分子ASK1が不活性化状態ではRoquin-2やUSP9Xとの結合が認められないなどの結果から、基本的に活性酸素刺激によるASK1の活性化が、Roquin-2やUSP9Xとの相互作用と活性制御に重要であることが分かった。Roquin-2とUSP9XによるASK1活性化のバランス制御を介したストレス応答誘導機構については、実際に、Roquin-2あるいはUSP9Xが欠損した細胞では、それぞれASK1の量が増加・減少し、ストレス応答としての細胞死が増強・低下する結果が得られており、基本的にRoquin-2およびUSP9Xは細胞死に対して拮抗的に作用することが明らかとなった。さらに、Roquin-2については、その欠損細胞では炎症性サイトカインの産生が減少することを見出し、その作用がASK1依存的であることも確認している。我々は既に、感染ストレスに対して、ASK1は炎症性サイトカイン産生を亢進させて免疫応答を活性化する分子であることを見出しており、Roquin-2もASK1を介して免疫応答の重要な制御因子であることが判明した。 ASK1活性化因子であるTRIM48については、その基質候補分子を同定し、ASK1活性化機構についても検討を行った。基質候補分子は、ASK1の活性制御に深く関わる重要な分子であり、TRIM48によってユビキチン化分解されることで、ASK1活性化を制御している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、我々が新たに同定したRoquin-2やUSP9X、TRIM48といったユビキチン化関連酵素群による、活性酸素の強度に応じたASK1活性化のバランス制御を介して、酸化ストレス誘導性の細胞死や免疫応答といったストレス応答が適切に誘導される仕組みを分子レベルで解明し、ユビキチン化関連酵素を標的として、そのシステムの異常が原因となる免疫疾患や癌の新たな治療戦略開発へ繋げることである。 これまでに我々は、Roquin-2やUSP9X、TRIM48といったユビキチン化関連酵素群のエフェクター分子ASK1の活性酸素刺激に応じた活性化が、それらとの相互作用や活性制御に重要であること、また、ユビキチン化関連酵素群の欠損細胞を用いて、これらユビキチン化関連酵素群が、それぞれASK1活性化のバランス制御を介して、ストレス応答としての酸化ストレス誘導性の細胞死や免疫応答の調節を行っていることを明らかにしてきた。特に、ASK1活性化因子として同定したTRIM48については、その基質候補分子を同定し、その基質候補分子は、ASK1の活性制御に深く関わり、TRIM48を介したユビキチン化分解によって、ASK1活性化を制御している可能性が示唆され、ストレス応答シグナルにおけるTRIM48の生理的役割と重要性についても検証できた。 以上の結果とから、本年度の目標・実施計画はほぼ達成できたと考えており、当初の本研究の目的は研究期間内で十分達成できる見通しである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も、我々が独自に同定したUSP9X、Roquin-2、TRIM48といったユビキチン化関連酵素群が、どのようにして酸化ストレス応答キナーゼASK1の活性を厳密に制御しているのか、その仕組みについて詳細な分子レベルでの解析を進めたい。 特に、ユビキチン化関連酵素群を介した活性酸素シグナルの微調整の仕組みと、その仕組みによる、適切な酸化ストレス応答の誘導メカニズムについて明らかにしたい。同時に、これらのユビキチン化関連酵素群が、ASK1活性化の活性酸素依存的なバランス制御にどのように関わるのか、また、このようなASK1依存的な酸化ストレス応答シグナルのバランス変化が免疫応答や細胞死に与える影響についても検討したい。さらに、これら活性酸素シグナル制御に関わるユビキチン化関連酵素が、実際に自己免疫疾患や癌などの治療標的としての妥当であるか否か、ノックアウト細胞あるいは遺伝子改変動物を用いて、細胞からの炎症性サイトカイン産生量や自己免疫疾患等の動物モデルなどで検証し、研究の推進を図りたい。
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Research Products
(19 results)
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[Journal Article] PXR stimulates growth factor-mediated hepatocyte proliferation by cross-talk with the FOXO transcription factor.2016
Author(s)
Shizu, R., Abe, T., Benoki, S., Takahashi, M., Kodama, S., Miayata, M., Matsuzawa, A., Yoshinari, K.
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Journal Title
Biochem. J.
Volume: 473
Pages: 257-266
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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