2015 Fiscal Year Annual Research Report
分子標的MRIを基盤とした低酸素・活性酸素種・レドックス活性可視化への挑戦
Publicly Offered Research
Project Area | Oxygen biology: a new criterion for integrated understanding of life |
Project/Area Number |
15H01403
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
近藤 輝幸 京都大学, 学際融合教育研究推進センター, 教授 (20211914)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 酸素生物学 / 腫瘍低酸素領域 / 放射線増感剤 / 分子標的 MRI / 三重共鳴 NMR / ホスホリルコリン / 安定同位元素 / セラノスティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
腫瘍組織には通常の組織とは異なり、細胞の増殖が速すぎるために血管新生が追い付かず、血管から離れた場所に低酸素領域が存在する。この低酸素領域は初期の腫瘍から存在し、酸素が少ないために活性酸素種が発生し難いため、放射線治療に対して抵抗性を有する。そのため、この低酸素領域が、腫瘍の悪性度や転移能を高める原因の一つと考えられている。 そこで、まず、研究代表者は、2-ニトロイミダゾール(2-NI)に着目した。2-NI は、低酸素環境下で機能する放射線増感剤であり、低酸素環境下の細胞内において、一電子還元酵素による還元を受け、親水性が向上、あるいは細胞内物質と結合する。その結果、細胞膜逆透過が抑制され、腫瘍細胞内に蓄積すると考えられている。次に、診断方法として、研究代表者が開発した独創的「分子標的 NMR/MRI 法」に着目した。分子標的 MRI 法の基礎となる三重共鳴 NMR 法は、分子プローブの特定の 1H シグナル(1H‐13C‐15N 配列の 1H)のみを高選択的に観測する優れた手法である。すなわち本法を用いることにより、生体内の水や脂質由来の 1H によるバックグラウンドノイズは完全に消去され、13C、15N 核を有する分子プローブのみを高選択的に検出可能となる。 そこで平成 27 年度は、以上のプローブ設計指針に基づき、2-NI と 13C/15N 二重ラベル化ホスホリルコリンとを、鎖長が異なるアルキル鎖を介して複合化した 13C/15N-NIPC プローブの合成に成功した。さらに、in vitro での機能評価により、アルキル鎖長が 6 である 13C/15N-NIPC 6 が低酸素環境下、最も高い放射線増感能を示すこと、および細胞夾雑物が多数存在する系においても三重共鳴NMRにより、13C/15N-NIPC 6 プローブのみを高選択的に検出可能であることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本公募研究では、生体内の「酸素」環境をリアルタイムに画像化するため、「分子標的 MRI 法」に有効な3種類の新しい 13C/15N-ラベル化双極性ポリマープローブ(造影剤)の開発を目指している。その中で、平成 27 年度は、「生体内の低酸素領域に高集積し、同時に放射線増感剤としての機能を維持する 13C/15N-NIPC の開発」に成功した。さらに、感度向上のために、母骨格であるホスホリルコリンの原子移動ラジカル重合(ATRP)を行い、 13C/15N-PMPC/NIの合成と機能評価が必要であるが、第一の研究テーマである(1)生体内の低酸素領域に高集積し、同時に放射線増感剤としての機能を維持する 13C/15N-NIPC の開発については、順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
生体内の「酸素」環境のリアルタイムでの画像化を実現する以下の革新的分子プローブ(1)~(3)を開発する。さらに「診断」と放射線等による「治療」とを同時に実現するセラノスティックプローブの開発へと展開し、本新学術領域研究「酸素生物学」が目指す「酸素の生物学的理解」に貢献する。 (1)生体内の低酸素領域に高集積し、同時に放射線増感剤としての機能を維持する 13C/15N-NIPC の開発 (2)抗酸化活性を“その場” 観測する13Cで二重ラベルした分子プローブの設計・合成と、分子標的 MRI 法による生体内での活性酸素種の可視化 (3)レドックス活性を観る 13C/15N-ラベル化 MRI プローブを設計・合成する。合成した分子プローブが、溶液、組織、動物レベルで低酸素領域・抗酸化活性・レドックス活性を「分子標的 MRI 法」を用いて定量的に画像化する。
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Research Products
(9 results)
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[Journal Article] Magnetic resonance imaging of tumor with a self-traceable phosphorylcholine polymer2015
Author(s)
Yamada H, Hasegawa Y, Imai H, Takayama Y, Sugihara F, Matsuda T, Tochio H, Shirakawa S, Sando S, Kimura Y, Toshimitsu A, Aoyama Y, Kondo T.
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Journal Title
J. Am. Chem. Soc.
Volume: 137
Pages: 799-806
DOI
Peer Reviewed
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