2015 Fiscal Year Annual Research Report
TASKチャネルを標的とする低酸素応答機構に関する研究
Publicly Offered Research
Project Area | Oxygen biology: a new criterion for integrated understanding of life |
Project/Area Number |
15H01404
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
古谷 和春 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (40452437)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | カリウムチャネル / 酸素 / 電気生理学 / 細胞内シグナル伝達 / 酵素 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、頚動脈小体タイプIグロムス細胞の酸素感受性カリウムチャネルとして考えられる、TASKチャネルを標的とした低酸素応答の本態を理解することである。 単離したアフリカツメガエル卵母細胞にヒトもしくはマウスのTASK1およびTASK3 cRNAを注入し、発現したTASKチャネルの活性を電気生理学的に測定した。薬物の各サブユニットのホモ二量体への効果の評価にはTASK1もしくはTASK3 cRNAを単独で注入した卵母細胞を用い、TASK1/3ヘテロ二量体へ効果の評価にはTASK1およびTASK3をcRNA濃度レベルで等量注入した卵母細胞も解析に用いた。対照にはcRNAの代わりにvehicleとして水を注入した卵母細胞を用いて評価した。 過去のグロムス細胞を用いた研究から、NADPH oxidase(NOX)によって産生される過酸化水素がTASKチャネルを抑制する可能性が考えられた。そこで、H2O2のTASKチャネルに対する効果を調べた。結果として、上述したいずれの群においても、10 mM H2O2は抑制作用を示さなかった。また、guanylate cyclaseの関与も示唆されているが、この系では100 microM Nitroprusside Naも有意な効果を示さなかった。一方、以前から知られていたように細胞外の酸性化によってチャネル活性が抑制されることを確認した。これらの結果から、H2O2やNOは酸素応答機構に関わっていたとしてもTASKチャネルに対する直接作用ではなく、別の分子を介した作用であると考えられた。 低酸素応答に特に重要だと考えられているTASK1/3ヘテロ二量体の機能を詳細に解析するため、TASK1遺伝子とTASK3遺伝子をlinkerを挟んで繋いだタンデムコンストラクトを作成した。次年度、解析に用いる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度である平成27年度は、頚動脈小体タイプIグロムス細胞の酸素感受性カリウムチャネルで実施されてきた薬理実験をTASKチャネルで同様に実施し、酸素感受性機構に関する理解を進めることを目指した。研究期間開始後すぐに研究を本格化させることができ、本年度計画した研究は順調に実施された。その結果、TASKチャネル自身に、生理的な濃度での酸素感受性がないことが改めて分かり、TASKチャネルが低酸素応答機構に関わるとすると他の酸素感受性蛋白質との共役によって起こると考えられた。 また、次年度以降の解析に用いる、TASK1/TASK3チャネルのタンデムコンストラクトや、NOX4、PKGなど酸素応答性のシグナル伝達に関わる可能性のある蛋白質の発現ベクターの構築も初年度中に行った。それらを用いて、生理的酸素応答性の再現を目指す実験も開始した。これらの成果により、当初の計画通り順調な進展をしていると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は順調に進展しており、対策が必要な大きな問題は発生していない。申請時の計画段階から、実験的に検証可能な仮説を立て、実験により仮説が否定された場合の第二・第三の計画を用意している。平成28年度は、第一に、TASKチャネルと共役し低酸素応答機構に関わる酸素センサー蛋白質を明らかにする。第二に、本年度作成したTASK1-TASK3タンデムコンストラクトから発現するイオンチャネルも解析対象とし、細胞内シグナル伝達の結果起こるTASKチャネルの分子制御に関する実験を行う。この研究を実施するための実験機器や実験手法は準備は始められている。従って、次年度も当初の計画に従って研究を進めることが可能であり、期間内に研究目標を達成出来ると考えている。
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