2015 Fiscal Year Annual Research Report
腫瘍関連マクロファージ形成における低酸素及び活性酸素感受性TRPチャネルの関与
Publicly Offered Research
Project Area | Oxygen biology: a new criterion for integrated understanding of life |
Project/Area Number |
15H01409
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Research Institution | Teikyo Heisei University |
Principal Investigator |
清水 俊一 帝京平成大学, 薬学部, 教授 (60196516)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | TRPA1 / TRPM2 / TRPV1 / 腫瘍形成 / マクロファージ / 活性酸素 / 低酸素 |
Outline of Annual Research Achievements |
マクロファージは単球から分化する細胞で、免疫・炎症反応において重要な役割を担っている。腫瘍にはM1マクロファージとM2マクロファージ(腫瘍関連マクロファージ)が存在する。M1マクロファージは、炎症反応を惹起して腫瘍の増殖に抑制的に働くのに対して、M2マクロファージは腫瘍の成長に有利な環境を構築する。腫瘍の微小環境は、低酸素や活性酸素の増加などの特徴を有する。従って、単球やマクロファージはそれら微小環境を感知して様々な機能を発現していると推察される。近年、細胞が酸素分圧や活性酸素を感知するCa2+透過性チャネルとしてTRP関連タンパク質が同定されている。本研究は、単球及びマクロファージのM2マクロファージとしての機能獲得や機能発現における酸素分圧及び活性酸素感受性TRPチャネルの関与を中心に検討し、腫瘍形成の制御機構を明らかにすることを目的に研究を進めている。 平成27年度は、まず骨髄単球をマクロファージに分化させTRPs mRNA発現を検討した。その結果、マクロファージにはTRPM2 mRNAの高い発現が認められ、TRPA1 mRNAの発現も高くはないが認められた。一方、TRPV1 mRNAは検出限界以下であった。そこで、酸素分圧感受性チャネルであるTRPA1の役割を明らかにするために、低酸素(0.1% 酸素)によるマクロファージのM2およびM1マクロファージへの極化における細胞外Ca2+の影響を検討したが、影響は認められなかった。これらの観察より、TRPA1が関与している可能性は低いと考えている。我々は、これまでに活性酸素感受性チャネルであるTRPM2欠損マウスでは、腫瘍の成長が抑制されることを見出している。今後は、TRPM2の役割を中心に検討を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
マクロファージのM2マクロファージへの極化におけるTRP関連タンパクの影響について、低酸素の影響を中心に検討を進めた。骨髄より調製した単球をマクロファージ、M1及びM2マクロファージへ極化させる系を確立し、各細胞のTRPs mRNA発現を測定したところ、どの細胞においてもTRPM2 mRNAの高い発現が認められ、TRPA1 mRNAの発現も高くはないが認められた。一方、TRPV1 mRNA発現は認められなかった。平成27年度は、酸素分圧感受性チャネルであるTRPA1に焦点を当て、低酸素によるマクロファージのM2マクロファージへの極化の評価系を作成し、細胞外Ca2+の影響を検討したが影響は認められなかった。今後、TRPA1阻害剤の影響も検討する予定であるが、M2マクロファージへの極化においてTRPA1が関与している可能性は低いと考えている。我々は、これまでに活性酸素感受性チャネルであるTRPM2欠損マウスでは、腫瘍の成長が抑制されることを見出している。今後は、TRPM2の役割を中心に研究を進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度の研究で、マクロファージのM2マクロファージへの極化に酸素分圧感受性TRPA1チャネルの関与が否定的となった。我々は、これまでに活性酸素感受性チャネルであるTRPM2欠損マウスでは、腫瘍の成長が抑制されることを見出している。今後は、TRPM2チャネルの役割に焦点を当て研究を推進する。 野生型マウスとTRPM2欠損マウスに腫瘍細胞を移植し、腫瘍を形成させ腫瘍内のM2およびM1マクロファージの集積数や腫瘍内分布を比較検討する。また、平成27年度に確立した骨髄より調製した単球をマクロファージ、M1及びM2マクロファージへ極化させる系を用いて、活性酸素の影響を野生型マウスとTRPM2欠損マウスから分離した細胞で比較する。活性酸素の影響が認められた場合には、そのシグナル伝達系を解析する。また、M1及びM2マクロファージを活性酸素に暴露し、どのような機能が発現するか検討する。これらの結果を総合的に解析することにより、腫瘍形成における活性酸素感受性TRPM2チャネルの役割を明らかにしていく予定である。
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