2015 Fiscal Year Annual Research Report
経路選択的シナプス遮断法を用いた随意性眼球運動系の神経回路の障害とその再編
Publicly Offered Research
Project Area | Mechanisms underlying the functional shift of brain neural circuitry for behavioral adaptation |
Project/Area Number |
15H01421
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
高橋 真有 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (50581344)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | サッケード / 上丘 / Listingの法則 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ウィルスベクター二重感染とTet-Dox法をサル眼球運動系に用い、従来の方法では不可能であった経路選択的遮断を行い、眼球運動制御系における未解決問題を解決する。随意性眼球運動では、水平・垂直の二次元の自由度しか持たず、回旋運動が起こらないことは、Listingの法則として古くから知られるが、このListingの法則を成立させる中枢神経基盤は長い間不明であった。しかし申請者らは最近、左右上丘間の交連性興奮結合がこの基盤であることを明らかにした。本研究では、上丘交連性結合をウィルスベクター二重感染により選択的に機能遮断することで、サッケード眼球運動に回旋成分が出現することを示し、上丘交連性結合がListingの法則を支える中枢神経機構であることを証明する。 平成27年度は、サル1頭を用いて、上丘におけるウィルスベクター二重感染実験を行い、組織標本を作成し、上丘内の視覚入力のトポグラフィーを解析して上丘内の注入部位を同定する方法や、ウィルスベクターの上丘における取り込み効率、生存期間などについて、検討を行った。AAVを順行性に上丘に注入し、対側上丘にレンチウィルスを注入して、上丘間交連性結合細胞を二重感染させた。組織標本の観察により、目的とする細胞が染色されたが十分量ではなかった。また、同一個体で上丘の出力細胞のうち、一側riMLF(垂直系サッケードの中枢)にレンチウィルスを、上丘の細胞体領域にAAVを、電気生理学的に同定後に注入した。こちらは二重染色をした上丘出力の視蓋網様体細胞が多数上丘中間層に染色されてきたため、この注入部位と注入量は十分な条件を満たしていると考えられた。同時に、別のサル1頭に対して、視覚誘導性サッケードの訓練を行った。回旋運動の解析のため、高速赤外線ビデオカメラを用いたシステムを開発し、3次元眼球運動解析のコンピュータプログラムを新たに開発した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、初年度にサル1頭を用いてウィルス二重感染法を用いて組織実験を行い、上丘交連性細胞および出力細胞に対するウィルスベクターの感染効率について調べることができた。注入部位の同定方法や注入量、生存期間についても検討し、次年度に行う注入実験のための準備を十分行うことができた。上丘交連性細胞については、二重感染した細胞が予想より少なかったため、注入量および注入方法に改善が必要と考えられた。回旋を含む3次元眼球運動の解析を行うため、高速赤外線カメラ(サンプリング400Hz)を用いた記録システムを開発した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、平成27年度から記録を開始したサルにおいて、視覚刺激訓練および視覚誘導性サッケードの訓練を完成させ、上丘からの単一神経細胞の活動を記録し、上丘交連性細胞の性質を分析する。さらに、上丘は大脳表面から約15mm程の深部にあるので、神経生理学的方法を用いてその部位を決定する必要がある。上丘部位の同定後に、ウィルスベクター注入を行う。特定回路遮断前後の視覚誘導性サッケード眼球運動を計測し、眼球運動に起こる障害、特に回旋成分の有無を分析する。
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Research Products
(4 results)