2015 Fiscal Year Annual Research Report
細胞競合の数理解析:増殖速度の差と極性崩壊がもたらす多細胞力学
Publicly Offered Research
Project Area | Cell competition: a mechanism for survival of the fittest in the multi-cellular community |
Project/Area Number |
15H01490
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
藤本 仰一 大阪大学, 理学研究科, 准教授 (60334306)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 数理モデル / 恒常性 / 力学 / 細胞社会 / システム生物学 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞競合の基盤となる細胞間に働く機械的な力を介した相互作用と分子ネットワークの動作原理の解明を目指し、今年度は主に数理モデルを用いた研究を行った。並行して、ショウジョウバエ上皮組織における細胞競合の画像解析を進めた。 細胞競合では、分裂の速い細胞に接する分裂の遅い細胞に細胞死が誘導される。数理モデルの計算機シミュレーションにおいて、この死ぬ細胞に隣接する細胞の頂端面の面積を細胞死前後で比較したところ、分裂の遅い細胞はほとんど変化がないのに対して、分裂の速い細胞は細胞死直後から急激に拡大して死細胞の面積をほぼ占有することを数理モデルで発見した。この細胞拡大の非対称性は、細胞死に際して特定の細胞の配置換え(cell intercalation)の発生が主要因であり、死細胞が分裂の速い細胞集団(クロン)との境界に沿って伸長しているほど顕著であった。この細胞伸長は増殖速度の差に起因してクロン境界の分裂の遅い細胞のみで生じることは、我々は去年度までにショウジョウバエ翅原基とモデルの双方で見出している。細胞死の前と後における力学的な細胞の変形が協調することで、分裂の速い細胞が細胞死で失われた空間をめぐる競合の勝者となることが予測された。これらの成果を5件の招待講演等で報告した。 画像解析に関しては、クロン境界形状の網羅的スクリーニング系を構築すべく、ショウジョウバエ翅原基に異なる遺伝子変異を導入した複数のモザイククロンの画像解析を行った。クロン境界形状を複数の形状指標で定量化するができた。増殖速度差による境界と細胞の変形に関しては、上述の理論予測の一部を、ショウジョウバエ翅原基の画像解析から検証することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H27年度に計画した3つの研究テーマ(画像解析、増殖速度差による境界と細胞の変形、力学と分子ネットワークのハイブリッドモデル)をほぼ予定通り遂行することができた。画像解析に関しては、クロン境界形状の網羅的スクリーニング系を構築すべく、ショウジョウバエ翅原基に異なる遺伝子変異を導入した複数のモザイククロンの画像解析を行った。クロン境界形状を複数の形状指標で定量化するができた。増殖速度差による境界と細胞の変形に関しては、上述の理論予測の一部を、ショウジョウバエ翅原基の画像解析から検証することに成功した。力学と分子ネットワークのハイブリッドモデルを構築し、拡散因子の濃度勾配に応じた増殖などの計算が可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
数理モデルで見い出した細胞死で空いた面積の力学的な競合に関する理論予測は、実際の上皮組織のライブ観察により検証ができるであろう。また、画像解析を実用化するためには、多変量解析などを導入することで客観的かつ高速なスクリーニング法の構築が有用であろう。
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Research Products
(7 results)