2015 Fiscal Year Annual Research Report
長期培養系を用いた精子幹細胞の老化メカニズムの解明
Publicly Offered Research
Project Area | Establishing a new paradigm of the pathogenesis of diseases through the understanding of stem cell aging |
Project/Area Number |
15H01510
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
篠原 美都 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10372591)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 幹細胞 / 老化 / 生殖 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では精子幹細胞培養株(GS細胞)の長期培養サンプル(培養開始から5ヶ月と60ヶ月のGS細胞: “5M-GS細胞”と“60M-GS細胞”)を用いて老化の表現型を調べた。(1)GS細胞の長期培養に発現する老化細胞のマーカーの検索:60M-GS細胞では酸性条件下でのSenescence-associated β-galactosidase:SA-β-Galの増強は認められなかった。一方ストレス性MAPキナーゼp38やJNK・p53の活性化が見られた。またDNA損傷DNA損傷やテロメア短縮への細胞応答として現れる53BP1のテロメア末端への集積が見られた。(2)遺伝子発現パターンの変化の解析 :フローサイトメトリーによりGFRA1等の発現亢進が見られた。マイクロアレイ解析・次世代シークエンサーによる全ゲノム解読・ヒストン修飾トリメチル化H3K4およびトリメチル化H3K27のChIP-シークエンスによる老化原因遺伝子の網羅的解析を行った。(3)精巣内移植によるコロニー形成・分化の解析:60M-GS細胞は精巣内移植によりコロニー形成するが、分化の阻害が認められた。(4)試験管内でのGS細胞の動態変化の観察:60M-GS細胞はサイトカインへの増殖反応性が高いことが分かった。(5)活性酸素・ミトコンドリア代謝の解析:2-deoxy glucose存在下で培養を行うと、60M-GS細胞の増殖活性が阻害された。フラックスアナライザーを用いてミトストレステストおよびglycolysis testを行って調べたところ、ミトコンドリア代謝と解糖系への依存の変化があることが分かった。また、Mitotracker染色によりミトコンドリアの局在と量に変化があることが分かった。(6)環境側のもたらす老化促進因子の検索のため、若いマウス(約6-8週齢)と高齢のマウス(生後1-2年)にアルキル化剤busulfanを投与し、内因性精子形成の除去を試みたが、高齢マウスが死亡し、条件改善の必要性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通りに進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)GS細胞を用いた老化シグナルの検索 ①マイクロアレイ法や次世代シークエンサーによる網羅的解析で関与が示唆された老化誘導候補遺伝子について、GS細胞の老化の表現型との相関を調べる。5M-GS細胞にレンチウイルスベクターにて強制発現もしくはsiRNA/shRNA を用いてノックダウンを行い、増殖速度やサイトカインへの反応性・遺伝子発現パターン・代謝・移植による幹細胞活性などを調べ、60M-GS細胞で見られたような表現型が誘導されるかを判定する。②60M-GS細胞にても強制発現もしくはノックダウンを行い、逆に若返りが誘導されるかを調べる。 (2)様々な老化シグナル間の相関の解明:(1)で関与が示唆された老化誘導遺伝子を中心に、精子幹細胞老化のシグナル経路を解明し、認められた複数の表現型との相関と照らし合わせ、老化に伴う様々な現象の上下関係を明らかにする。それに基づき、精子幹細胞老化の根源的な原因について考察する。 (3)in vitroの老化メカニズムがin vivoの幹細胞でも使われているかの検証:高齢のマウスや老化モデルマウスを用いて、長期培養系にて観察された老化の表現型がin vivoでも認められるかを、免疫組織染色やソーティングによって調べる。 (4)環境側のもたらす老化促進因子の検索:27年度のマイクロアレイ法の結果得られた環境側の老化促進因子に関して、候補遺伝子を絞り込む。候補遺伝子については、精細管の主な支持細胞であるセルトリ細胞にレンチウイルスにより遺伝子操作を行い、精子幹細胞および精子形成に及ぼす効果に基づき定量的に判定する。
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Research Products
(9 results)