2015 Fiscal Year Annual Research Report
造血幹細胞ニッチ制御モジュールの加齢性変化と造血システム異常の関連
Publicly Offered Research
Project Area | Establishing a new paradigm of the pathogenesis of diseases through the understanding of stem cell aging |
Project/Area Number |
15H01512
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
片山 義雄 神戸大学, 医学部附属病院, 講師 (80397885)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ニッチ制御モジュール / 加齢性変化 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度はニッチモジュールとしての骨髄好中球の役割と神経シグナルによる制御機構の確立を主な目標として研究を行った。 G-CSF投与により交感神経が興奮すると、骨髄血球でmPGES-1のmRNA発現が上昇、特に成熟好中球がG-CSFによって増える事に起因してこの現象がおこることを確定できた。骨髄成熟好中球をソーターで分取し、汎βアドレナリン受容体アゴニストで刺激する事により、PGE2産生が有意に増加することを確定した。mPGES-1ノックアウトマウスでは、G-CSF投与での体温上昇がみられず、また造血前駆細胞の動員効率が野性型マウスに比べて良いことが確認できた。すなわち、G-CSF投与によって惹起された交換神経シグナルが、骨髄好中球を刺激することでPGE2産生を促し、これによる発熱と動員抑制を引き起こすことが考えられた。野性型マウスに外部からPGE2を投与すると、G-CSFでの動員が抑制されるが、この現象がEP4ノックアウトマウスでは消失していた。骨髄移植によるキメラマウスで、EP4が血球ではなく骨髄環境側でのみ欠損していることが、この現象に寄与していることも確認した。野性型マウスにPGE2を投与した場合の動員抑制は、抗オステオポンチン抗体を投与することで解除できたため、PGE2によるEP4を介した骨髄ニッチ細胞でのオステオポンチン発現増強が動員抑制機序である事が強く示唆された。 G-CSF投与時の交感神経刺激が好中球を刺激することを更に詳細に解析した。ソーターで分取した骨髄成熟好中球に3種類あるβアドレナリン受容体のそれぞれの選択的アゴニストを投与することにより、β1、β2アゴニストでは同効果は認めず、β3アゴニストのみでPGE2産生亢進効果があることが明らかとなった。 以上より、G-CSF投与により骨髄中で増加した成熟好中球は、同時に交感神経刺激を受けてアラキドン酸カスケードをPGE2産生方向に活性化して、骨髄環境モジュールとして作用している構図が確立できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画にほぼ沿った形で研究は進行しており、結果も当初の仮説を十分裏付ける形になっているため、研究計画の大きな変更がない。
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Strategy for Future Research Activity |
mPGES-1ノックアウトマウスをドナーないしはレシピエントとして骨髄移植をすることで、血球側ないしは環境側にのみストレス性PGE2産生機構不全を起こさせることで、G-CSF投与時の発熱や動員効率を検討する。また、抗好中球抗体を投与し生体内の好中球を除去することでG-CSF投与時の発熱等PGE2に伴う現象がどう変化するか検討する。これらにより、好中球がG-CSF投与時の主なPGE2産生と発熱等の制御細胞であることが確定する。この交感神経、好中球PGE2、骨髄環境という機能連鎖を、高齢マウスや早期老化マウスを用いて検討し、加齢性骨髄環境変化を具体的に捉えて行く。
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