2015 Fiscal Year Annual Research Report
1分子計測によるSecMの翻訳アレスト機構の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Nascent-chain Biology |
Project/Area Number |
15H01527
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
船津 高志 東京大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (00190124)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 1分子計測(SMD) / ナノバイオ / 光ピンセット / 蛋白質 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1) 翻訳アレストにおけるリボソーム外の新生SecM鎖の役割の解明 新生ポリペプチド鎖のリボソーム外領域が翻訳アレストの安定性を変化させることを明らかにした。特に天然のSecMのN末端側配列は、翻訳アレストの安定化に有利であることが分かった。翻訳アレストの安定化機構について詳細に調べるため、新生ポリペプチド鎖のリボソーム外領域に部分欠損や変異を入れた鋳型DNAを作製した。その結果、2次構造予測によりαヘリックスを形成すると予測された部分が翻訳アレストの安定化に寄与していることが分かった。中でも正に帯電したいくつかのアミノ酸残基が特に重要であり、これらを1残基置換すると、翻訳アレスト時間が大きく変化することが示された。 (2) 翻訳アレスト解除の1分子力学測定 翻訳アレストを起こしてmRNA上に停滞したリボソームに、人工的に負荷を加えて翻訳アレストを解除し、その後の翻訳をリアルタイムで観察する実験系を構築した。まず、無細胞翻訳系によりSecM翻訳アレスト複合体(新生ポリペプチド鎖-リボソーム-mRNA)を調製し、新生ポリペプチド鎖とmRNAをそれぞれビーズに結合させ、光ピンセットを用いて両端に負荷を加えた。負荷を加えながら、ビーズの中心間距離の時間変化を測定することで、翻訳アレストの解除および翻訳再開後の翻訳速度の実時間測定が可能な実験系を確立した。この実験系を用いて、異なる大きさの負荷を新生ポリペプチド鎖に印加し、翻訳アレストの解除について調べた。その結果、数pN程度の負荷を継続的に印加することで、翻訳アレストが解除され、10 codon/min程度の速さで翻訳が起こることを示唆するデータを得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1) 翻訳アレストにおけるリボソーム外の新生SecM鎖の役割の解明 翻訳アレストの安定化機構について詳細に調べるため、新生ポリペプチド鎖のリボソーム外領域に部分欠損や変異を入れた鋳型DNAを作製した。その結果、2次構造予測によりαヘリックスを形成すると予測された部分が翻訳アレストの安定化に寄与していることが分かった。中でも正に帯電したいくつかのアミノ酸残基が特に重要であり、これらを1残基置換すると、翻訳アレスト時間が大きく変化することが示された。この結果は、新生鎖のリボソーム外領域が負に帯電したリボソーム表面と静電相互作用をすることにより、翻訳アレストを安定化していることを示唆している。 (2) 翻訳アレスト解除の1分子力学測定 異なる大きさの負荷を新生ポリペプチド鎖に印加し、翻訳アレストの解除について調べた。その結果、数pN程度の負荷を継続的に印加することで、翻訳アレストが解除されることを示唆するデータを得た。しかし、より大きな負荷を長時間加えた場合には、リボソームの破断に由来すると思われる現象が観察された。高い効率で翻訳アレストの解除を行うためには、より大きな負荷が必要であると考えられるため、リボソームの破断を防ぐように負荷を加える方向を変化させるなどの工夫を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) 翻訳アレストにおけるリボソーム外の新生SecM鎖の役割の解明 前年度にリボソーム外の新生鎖が翻訳アレスト状態の安定化に大きく寄与することを見出したので、大腸菌SecMの様々な部位欠損変異体、あるいは他種のSecMとのキメラ変異体の翻訳アレスト能・翻訳アレストの安定性を評価する。これによって「翻訳アレスト安定化領域」を同定する。「翻訳アレスト安定化領域」は、リボソームと直接相互作用することが予想される。そこでこの領域のアラニンスキャンを行い、相互作用に寄与する残基を特定する。 (2) 翻訳アレスト解除の1分子力学測定 前年度に引き続き、光ピンセットを用いてSecMのアレスト配列とリボソームを破断するのに必要な力を1分子レベルで測定する。SecMのアレスト配列とリボソームを破断するのに必要な力を、光ピンセットを用いて1分子計測するには多くの時間と労力がかかり、多量のデータを得ることが難しい。HaloTag-SecM-リボソーム複合体の翻訳アレスト解除の力依存性に関する大量のデータを効率よく取得するため、翻訳因子を含む溶液を送液しながら、定常的にHaloTag-SecM-リボソーム複合体に流体抗力を印可する。負荷により翻訳アレストが解除されると、SecMの翻訳が再開する。翻訳が終結すると、リボソームが基板上から解離する。これに要する時間、すなわち翻訳アレストの寿命を様々な流速(流体抗力)条件下で測定し、翻訳アレスト解除の力依存性を1分子レベルで調べる。
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[Journal Article] Culture-independent method for identification of microbial enzyme-encoding genes by activity-based single-cell sequencing using a water-in-oil microdroplet platform2016
Author(s)
Kazuki Nakamura, Ryo Iizuka, Shinro Nishi, Takao Yoshida, Yuji Hatada, Yoshihiro Takaki, Ayaka Iguchi, Dong Hyun Yoon, Tetsushi Sekiguchi, Shuichi Shoji, Takashi Funatsu
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Journal Title
Scientific Reports
Volume: 6
Pages: 22259
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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[Presentation] Culture-independent methods for screening and identifying microbial enzyme-encoding genes using microdroplet-based single cell genomics2015
Author(s)
Kazuki Nakamura, Ryo Iizuka, Takao Yoshida, Yuji Hatada, Yoshihiro Takaki, Shinro Nishi, Ayaka Iguchi, Dong Hyun Yoon, Tetsushi Sekiguchi, Shuichi Shoji, Takashi Funatsu
Organizer
The 19th International Conference on Miniaturized Systems for Chemistry and Life Sciences
Place of Presentation
Gyeongju (Republic of Korea)
Year and Date
2015-10-25 – 2015-10-29
Int'l Joint Research
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[Presentation] Culture-independent method for identifying microbial enzyme-encoding genes based on activity-driven single cell genomics2015
Author(s)
Kazuki Nakamura, Ryo Iizuka, Takao Yoshida, Yuji Hatada, Yoshihiro Takaki, Shinro Nishi, Ayaka Iguchi, Dong Hyun Yoon, Tetsushi Sekiguchi, Shuichi Shoji, Takashi Funatsu
Organizer
第53回日本生物物理学会年会
Place of Presentation
金沢大学 角間キャンパス(石川県・金沢市)
Year and Date
2015-09-13 – 2015-09-15
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