2015 Fiscal Year Annual Research Report
新生鎖合成と連動する葉緑体蛋白質包膜透過の分子メカニズムの解明
Publicly Offered Research
Project Area | Nascent-chain Biology |
Project/Area Number |
15H01535
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中井 正人 大阪大学, たんぱく質研究所, 准教授 (90222158)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 蛋白質膜透過 / オルガネラ生合成 / 蛋白質輸送 / 葉緑体 / 膜蛋白質複合体 |
Outline of Annual Research Achievements |
最近、我々は葉緑体内包膜の蛋白質膜透過装置TICの同定に成功し、さらにそれに付随して包膜のトランスサイドで働く新奇膜透過駆動モーター複合体の同定にも成功している。長年、葉緑体包膜には強力な前駆体蛋白質のアンフォールディング活性があると言われてきたが、このトランスサイドの輸送モーターが、ATPを消費しながら膜のシスサイドのアンフォールディングに重要な役割を果たしていると思われる。本研究では、特に、外包膜上で新生鎖合成装置と相互作用する因子の検索や、TOCとTICの機能連動、およびトランスサイドの輸送モーター複合体が前駆体と相互作用する時期とその作用様式、について詳細に解析する。今年度の解析では、特に輸送モーター中に同定された、必須因子(Aとする)についての詳細な解析を進めた。この因子Aは、他の輸送モーター構成因子がAAA型ATPase であり、モーターとしての機能が類推されるのに対し、その一次構造上の特徴からは、直接モーターとして働くとは考えにくい。まず、この因子が枯渇するようなシロイヌナズナ変異体を取得し、ここから単離した葉緑体を用いる事で、その輸送過程への影響を調べる事ができた。その結果、この因子は、葉緑体の生理条件がある特定の条件の時に、モーターにエネルギーを供給するのに使われているのではないかとの作業仮説を立てるに至っており、これを現在検証中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2重の包膜に囲まれた葉緑体の場合、細胞質ゾルで合成された葉緑体蛋白質の新生鎖は、外包膜と内包膜を連続的に通過する必要がある。この新生鎖の膜透過には、トランスサイドのモーター複合体が必須であり、これがATP加水分解エネルギーを利用して膜透過を駆動している。見積もりのよると、1分子の前駆体を膜透過するのに数万分子のATPを消費する。葉緑体は、光存在下では、光合成光リン酸化によりATPを供給する事が可能である。しかし、光合成があまり行われない生理条件においても、様々な蛋白質を輸送する必要がある。今回得られた知見は、このような生理的条件下での輸送の駆動に関する重要な発見であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
この因子Aの役割を明確にするためには、この因子の機能を部分的に変化させたような、葉緑体を用いた解析が有効である。しかしながら、この因子そのものが、シロイヌナズナ植物体にとって必須であり、その変異体取得には、条件発現抑制株の利用等の工夫が必要である。この方法にも挑戦していきたいと考えている。
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Research Products
(6 results)