2015 Fiscal Year Annual Research Report
異常タンパク伝播阻止に立脚した神経変性疾患の進行予防治療開発
Publicly Offered Research
Project Area | Prevention of brain protein aging and dementia |
Project/Area Number |
15H01550
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
青木 正志 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70302148)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 神経変性疾患 / 異常タンパク伝播 / 小胞輸送機構 / αシヌクレイン / microRNA / エキソソーム / 疾患修飾療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
遺伝性・孤発性神経変性疾患において、病変部位における異常凝集タンパク沈着は病理学的指標であるばかりでなく、神経細胞死につながる重要なステップと考えられている。プリオン仮説は、PD患者脳におけるLewy病理のtopographic progressionとも論理的整合性を有する。一方、プリオン病と神経変性疾患の間には症状進行スピードや病理学的進展パターンの点で大きな隔たりがある。実際、分子・細胞レベルでみても変性疾患関連タンパクとプリオンの挙動には相違点が多く、個々の凝集性タンパクの生化学的特性、タンパクの高次構造、あるいは細胞のストレス状況によっても伝播機構が異なる可能性が指摘されている。故に、それぞれの凝集性タンパク毎に分泌・吸収・分解機構を精緻に解明することが今後の治療応用を考える上で不可避である。申請者らは異常タンパク伝播の背景にある膜輸送・小胞輸送系に早くから着目し、PD 患者脳内に蓄積する凝集化αシヌクレイン(αS)の吸収・分泌・分解に関与する小胞輸送経路を詳細に渡り明らかとしてきた。これらの研究をさらに発展させるべく、本研究では各種神経変性疾患における異常凝集タンパク伝播現象の背景にある分子機構の詳細を明らかとする。具体的には(i) 神経細胞におけるTau、TDP-43の吸収・分泌・分解メカニズム解明、(ii) 家族性PD・ALS病態下における異常タンパク伝播への影響、 (iii) 細胞外核酸 特にエキソソーム中microRNAを介した伝播現象の可能性の3命題にターゲットを絞り、動物モデルおよび髄液中microRNA (miRNA)などの患者由来生体試料を用いた多角的な病態メカニズム解析を進めると同時に、伝播阻害効果をもつリード化合物を探索する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は以下の2つの研究に注力した。第一の課題として、ミスフォールド蛋白の品質管理におけるエンドソーム-リソソーム制御因子ESCRT分子の機能的役割を検証した。同研究にて、マウスにおける前脳特異的ESCRT-0/Hrs欠損が、αS、TDP-43をはじめとするユビキチン陽性蛋白蓄積を伴う海馬神経細胞の変性脱落を生じることを確認した。さらにPC12細胞を用い、Hrsサイレンシングがオートファジー分解を停滞させ、JNKおよびネクロトーシス促進分子RIPK1の活性化を介しERストレス誘導性細胞死を惹起することを確認した(Sci Rep, provisionally accepted)。もう一つの課題として、αS細胞間伝播のメカニズム解析を進めた。この中でDATのエンドサイトーシスがαSの細胞内取り込み促進することを発見した。またダイナミンGTPase阻害作用を有するセルトラリン存在下でαS fibrilの取込みが顕著に抑制されることを見出した。これらの知見をさらに発展させるべく、現在αS脳内接種マウスを用いセルトラリンの治療効果検証実験を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) 神経細胞におけるαS吸収・分泌・分解メカニズム解明:細胞モデルを用いて、SSRIなどの既存薬におけるαSYNの細胞内への取り込み抑制効果を検討し、候補薬剤種とその有効濃度を推定する。細胞モデルの結果に基づいて選定された候補薬をin vivoモデルにて検討する。具体的には線維化精製マウスαSYNをマウス脳へ超音波印加型convection-enhanced delivery装置を用い、一側の線条体へ局所注入する。接種1ヶ月後に対側大脳皮質におけるリン酸化αSYN病理に基づき、SSRIによる伝播阻害効果について定量評価を行う。 (2)家族性PD・ALS病態下における異常タンパク伝播への影響 :PDやALSなどの神経変性疾患に関連する原因遺伝子の多くが、小胞輸送機構を制御していることが近年明らかとなってきている。換言すればこれらの遺伝子異常により小胞輸送機構が破綻を来すと、異常タンパクの分解障害・細胞外分泌が誘導されることが予想される。本研究では家族性ALS・PD遺伝子異常による凝集タンパク分解・分泌プロセスおよび伝播へ影響について、細胞・ショウジョウバエモデルを駆使した病態解析を実施する。 (3) 細胞外核酸 特にエキソソーム中miRNAを介した伝播現象の可能性:miRNAによる伝播性タンパクの細胞毒性修飾の可能性を念頭に、AD、PD、MSA、ALS患者髄液エキソソーム中に含まれるmiRNAのアレイ解析を行い、疾患特異的に増加しているmiRNAを同定する。さらに、同miRNAを介した凝集性タンパクの発現制御、リン酸化などの翻訳後修飾、分解・分泌制御の可能性について、培養細胞系を用いた解析を試みる。
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Research Products
(12 results)
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[Journal Article] On the utility of MIBG SPECT/CT in evaluating cardiac sympathetic dysfunction in Lewy body diseases.2016
Author(s)
Odagiri H, Baba T, Nishio Y, Iizuka O, Matsuda M, Inoue K, Kikuchi A, Hasegawa T, Aoki M, Takeda A, Taki Y, Mori E.
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Journal Title
PLoS One
Volume: 11(4)
Pages: e0152746
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] ESCRT-0 dysfunction compromises autophagic degradation of protein aggregates and facilitates ER stress-mediated neurodegeneration via apoptotic and necroptotic pathways2016
Author(s)
Oshima R, Hasegawa T, Tamai K, Sugeno N, Yoshida S, Kobayashi J, Kikuchi A, Baba T, Futatsugi A, Sato I, Satoh I, Takeda A, Aoki A and Tanaka N
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Journal Title
Scientific Reports
Volume: 6
Pages: 24997
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] A Japanese multicenter survey characterizing pain in Parkinson’s disease2016
Author(s)
Kubo SI, Hamada S, Maeda T, Uchiyama T, Hashimoto M, Nomoto N, Kano O, Takahashi T, Terashi H, Takahashi T, Hatano T, Hasegawa T, Baba Y, Sengoku R, Watanabe H, Kadowaki T, Inoue M, Kaneko S, Shimura H, Nagayama H
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Journal Title
Journal of the Neurological Sciences
Volume: in press
Pages: -
DOI
Peer Reviewed
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