2015 Fiscal Year Annual Research Report
細胞間伝播を導くタウの細胞外放出の分子機構の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Prevention of brain protein aging and dementia |
Project/Area Number |
15H01552
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山田 薫 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00735152)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 神経科学 |
Outline of Annual Research Achievements |
NFTの細胞間伝播における鍵経路であるタウの放出のメカニズムを明らかにするために、近年細胞質タンパク質の分泌経路の一つとして知られているexosomeやectosomeなどの細胞外小胞の関与を検討し、内因性タウの9割以上が、これらの細胞外小胞に依存しない経路で分泌をうけていることを明らかにした。このような細胞外小胞に依存しないタウの分泌経路についてさらに検討するために、初代培養神経細胞から分泌されたタウを生化学的に解析し、細胞外においてタウは断片化型と全長型で存在していることを見出した。さらにin vivoマイクロダイアリシス法を用いて回収したマウス脳間質液中のタウについても同様の結果を得た。細胞外の全長型タウは細胞内のタウと異なり、複数のサイトにおいて脱リン酸化を受けた状態で存在していることも明らかになった。さらに神経活動を亢進すると、タウの分泌が上昇するだけでなく、分泌に先行して、細胞内のタウが脱リン酸化することから、タウの分泌と脱リン酸化に何らかの関連があることが示唆された。さらに、exogenous seedを添加することで、タウオパチー患者で見られるタウの細胞内蓄積を再現した培養細胞モデルを構築し、モノマー型タウだけでなく、高分子量型タウも細胞外へ分泌されていることを見出し、異常型タウの分泌機構を解析する準備が整った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度の研究実施計画は①exogenous seedの添加により、培養細胞内にタウ凝集体を形成する、NFT伝播の細胞モデルを利用し、高分子量の異常型タウの分泌を検出する実験系を構築すること、②このような異常型タウの分泌におけるexosomeや神経活動の役割を明らかにすることとしていた。①に関してはseed添加によりタウ凝集体を形成した細胞からモノマー型タウに加えて高分子量型タウの分泌を検出することができ、異常型タウの分泌メカニズム解析につなげることができた。またexosomeに関しては内因性のタウ分泌の90%以上がexosome非依存的に分泌されていることを明らかにした。②の神経活動と高分子量異常型タウ分泌との関係を検討するには至らなかった一方で、野生型の初代培養神経細胞を用いた検討で神経活動がタウの分泌に先行して細胞内タウを脱リン酸化することが見出され、exosomeなどの細胞外小胞を介さないタウの分泌メカニズム解明につながる可能性のある新知見が得られたため、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
細胞外小胞を介した分泌経路がタウ分泌の経路の主要なパスウェイではないことが示唆されたことに加えて、神経活動がタウの分泌上昇とともに、タウの脱リン酸化を生じるという実験結果が得られた。そこで今後は神経活動依存的なタウ分泌と脱リン酸化の因果関係について明らかにしていく。またタウオパチー患者で見られる細胞内タウ蓄積を再現する神経細胞を構築し、神経活動と高分子量異常型タウの分泌の関連について検討をすすめる。
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