2015 Fiscal Year Annual Research Report
周産期における胎動性・呼吸性運動と睡眠覚醒機構の関連性と発達過程の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Constructive Developmental Science; Revealing the Principles of Development from Fetal Period and Systematic Understanding of Developmental Disorders |
Project/Area Number |
15H01587
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Research Institution | Hyogo Medical University |
Principal Investigator |
荒田 晶子 兵庫医科大学, 医学部, 准教授 (00266082)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 胎動性活動 / 呼吸性活動 / NMDA受容体グリシン結合部位 / 橋結合腕傍核 / 発達障害 / 自閉症 |
Outline of Annual Research Achievements |
胎動性活動と呼吸性活動の胎生期発達においてグリシン性神経伝達との関連性を解析した。 胎生期から新生期にかけての胎動性活動の変遷や呼吸性活動の変遷を詳しく解析し、さらに胎動性活動の生成に関わるグリシンに関して、グリシントランスポーターノックアウトマウス(連携研究者の柳川右千夫先生より供与)を使用することによって、胎動性・呼吸性神経回路の発達における動作原理を解析した。グリシンは、胎生期に興奮性であり、生まれる直前から抑制回路となるので、その変遷と胎動性-呼吸性活動の変化についても解析した。その結果、胎動性活動は、NMDA受容体グリシン結合部位を特異的に遮断する薬物であるDCKAやL-689560により、完全にブロックされた。この事から、胎動性活動は、胎生期においてグリシン受容体よりもNMDA受容体のグリシン結合部位によって形成されていることが明らかとなった。自閉症モデルマウスと言われているグルタミン酸受容体のNR1サブユニットは、NMDA受容体グリシン結合部位に当たるため、胎動性活動の運動量の減少が自閉症の原因である可能性を示唆した。また、グリシントランスポーター(GlyT2-KO)ノックアウトマウスの実験では、全体的なグリシンの供給量が下がる状態となり、胎動性活動の発現回数は減少傾向にあったが、呼吸性活動においては大きな変化を認めなかった。GlyT2-KOマウスの行動学的解析においては、歩行運動が著しく障害され、交代性運動が上手くできない状態にあり、発達期の運動障害を引き起こしていた。自閉症患者の胎動性活動は少ないという臨床データもあるため、自閉症は胎生期の胎動性活動が脳の発達に関与している可能性が示された実験結果と考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度では、グリシン性活動の切り口で、自閉症の謎に迫る実験系を用意していたので、それによる実験結果は、順調に仕上がり、胎動性活動が自閉症の原因と言われているNMDA受容体グリシン結合部位により形成されていることを示すことができたので、結果的には順調に進展していると思われる。しかし、光操作装置はあるのだが、集光レンズの遅れにより、光操作セットアップに遅れがあり、光操作遺伝子マウスに関しては、今年度開発が間に合わず、グリシントランスポーターノックアウトマウスでの実験結果となったので、次年度は光操作を入れていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、オレキシンの光操作法を用いて睡眠覚醒を操作することにより、発達における睡眠覚醒の発現と呼吸性・胎動性活動との関連性を解析する。 オレキシン光操作マウスは、連携研究者の名古屋大学・環境医学研究所の山中章弘先生より供与を受ける。予備実験では、胎生20日ラットでは、オレキシンにより、呼吸リズムが促進され、(胎生20日齢では胎動性活動は見られない。)胎生18日齢では、胎動性活動に対してオレキシンは抑制を示した。胎生期にもオレキシンレセプターが発現している事が判明したので、オレキシンレセプターの光操作マウスを使うと胎生期発達の胎動性・呼吸性活動に対する反応性を解析出来る。オレキシンレセプターは脳に広く発現している事が知られているので、この実験には、出来るだけ光を絞って局所に当てるために光集光装置(2波長光集光装置Active High仕様導入予定)を使用する予定である。これを用いて、オレキシンの呼吸性・胎動性活動に対する反応を橋結合腕傍核レベル、延髄(呼吸中枢)レベル、脊髄(胎動性活動の起源)のレベルで調べる予定である。
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Research Products
(12 results)