2015 Fiscal Year Annual Research Report
好熱菌の環状脂質分子を摸倣した高分子の自己組織化による機能材料の開発
Publicly Offered Research
Project Area | Innovative Materials Engineering Based on Biological Diversity |
Project/Area Number |
15H01595
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山本 拓矢 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30525986)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 自己組織化 |
Outline of Annual Research Achievements |
好熱菌と呼ばれる単細胞生物は、細胞膜に環状の脂質分子を有することで海底火山や温泉など70 °C以上の環境で生息できる。本研究は、この環状脂質分子を摸倣した合成高分子に自己組織化を誘導し、形成した好熱菌細胞膜モデルを利用して高安定性獲得のメカニズムの解明を行い、その応用を探求するものである。 これまでに申請者は、環状高分子から成るミセルが、対応する直鎖状高分子ミセルよりも構造安定性が遙かに優れていることを見出した。本提案では、合成高分子を利用し好熱菌細胞膜の単純化モデル(ベシクル)を構築する。それを利用し、生体という複雑系を用いた実験では困難な環状構造が熱安定性へ寄与するメカニズムを解き明かす。さらに、そのメカニズムと実験を通して得られる種々の知見に基づき、環状高分子が形成する自己組織化構造を新奇高分子機能材料の開発へと展開する。これは、今までにない高分子トポロジーと自己組織化の融合という新しいコンセプトを材料設計に導入するものである。すなわち、本研究は生命科学、高分子科学、超分子化学の複合による学際的分野の設立を目指し、新奇機能材料の創出へつなげるものである。 本年度の実績として、環状ブロック共重合体の自己組織化によりベシクルの構築を達成した。二分子膜が球状に閉じた構造であるベシクルは、単細胞生物である好熱菌の細胞膜構造の理想的なモデルと考えられる。つまり、直鎖状PS-PEO-PSおよびその環状化したものを合成し、自己組織化を行ったところ、直鎖状および高分子より選択的ベシクル構造の形成を確認した。さらに、温度応答性の実験を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた環状高分子を用いたベシクルの選択的構築を達成した。さらに、環状高分子ベシクルと直鎖状高分子ベシクルでは有意な差異が現れた。本成果を論文投稿したため、おおむね順調に進行していると考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後、ストップトフロー法をはじめとするベシクルの特性評価を徹底的に行い、環状トポロジーに由来する特殊な性質の包括的な調査を行う。
|