2015 Fiscal Year Annual Research Report
白血球に学ぶ濃度駆動型水中駆動源微粒子の微細表面加工のための流体工学的研究
Publicly Offered Research
Project Area | Innovative Materials Engineering Based on Biological Diversity |
Project/Area Number |
15H01601
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
玉川 雅章 九州工業大学, 生命体工学研究科(研究院), 教授 (80227264)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 白血球 / 濃度マランゴニ効果 / 濃度勾配 / 推進機構 |
Outline of Annual Research Achievements |
人体中の血液に含まれる数マイクロメートルの大きさの白血球粒子は,免疫機能を持ち,細菌や炎症部へ向けて移動するといった性質を持つ.この白血球の駆動原理としては,細胞内でのアメーバ運動の他,白血球に働く炎症部より生成される誘因物質のサイトカイン濃度勾配による界面張力勾配駆動がある.この界面張力駆動力による白血球の運動が制御できれば,人体内でのドラッグデリバリーシステムへの発展が期待できる.また,模倣して人工的に作り出すことで,濃度勾配によって推進力を発生するバイオ操作の開発が可能となる.
本研究においては,駆動力が 界面張力勾配のみが働く水溶液中下で,濃度勾配を実験的に変化させて,顕微鏡を用いた白血球粒子移動の観察と原子力間顕微鏡による働く力の計測を行い,界面張力勾配による白血球運動機構の解明を行い,この生物の機能を模倣した濃度制御型微細表面加工のための基礎的研究を行う.本研究課題の目的のために把握しておくべき基礎的な現象として,白血球運動の速度に関して,(1)白血球が一定の溶液中において濃度勾配を受けて移動するときの界面張力のみによる速度 (2)重力や自由表面の影響による溶液中の対流から生じる速度,の2つが挙げられる.
平成27年度は,このうち(1)についての速度および濃度を測定した.そのため,倒立顕微鏡に取り付けられたCCDカメラを用いて,液体中に分散している白血球にサイトカインを滴下したときの挙動を観察し濃度輸送の観察から, 好中球膜上で濃度勾配と反対の勾配が生じ,好中球膜上におけるサイトカインの拡散は微粒子に働く駆動力よりも大きな駆動力が発生すること,好中球膜上における輝度分布の勾配が正,負の値を取りながら振動していることがわかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度については, 溶液中白血球のサイトカイン濃度勾配による運動の観察と測定を行った.具体的には,顕微鏡下で,誘因物質であるサイトカイン(IL-8)の濃度勾配をマイクロシリンジ等を用いて生成し,水溶液のセル内に浮遊している白血球に2次元的に作用させ,白血球の速度と濃度輸送の観察を行った.
セル中心部にある白血球の動きを,位相差顕微鏡でCCDカメラに撮影し,各白血球の速度を粒子追跡計測の画像処理から求めた.これらの条件により,サイトカインの滴下する場所,観察する白血球の位置の2点から,過渡的な濃度勾配が作用したときの白血球速度を平均的に求めた.
また,一方で,測定点での濃度勾配を厳密に出すため,サイトカインに付着させた蛍光物質を顕微鏡下でCCD観察し,その拡散状態(輝度分布,輝度勾配分布)を実験的に求めた,その結果,以下のことが得られた. サイトカイン濃度勾配による好中球の液中での運動機構をマランゴニ効果起因であることを仮定し,好中球膜上および周囲流体中でのサイトカインの濃度勾配について調べたところ,(1)好中球膜上で全体の濃度勾配と反対の勾配が生じ,(2)好中球膜上におけるサイトカインの拡散は微粒子に働く駆動力よりも大きな駆動力が発生すること,(3)好中球膜上における輝度分布の勾配が正,負の値を取りながら振動していることがわかった.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,部分的に遂行している数値計算での膜と周囲流体の拡散係数の比による運動機構の解明から,拡散係数比と吸脱着係数の2つのパラメータによって,膜面上での濃度勾配が変化するという結果が出つつあり,白血球の運動する条件を詳細に調べる.
さらに,マイクロ流路を利用した濃度勾配の形成と観察実験を行い,本年度よりも一定の濃度勾配下での詳細な観察を行い,また,最終目的である微粒子表面加工の可能性を探る.
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