2015 Fiscal Year Annual Research Report
同調行動が生み出す社会適応にかんする人-動物間の比較認知科学的検討
Publicly Offered Research
Project Area | Cognitive Interaction Design: A Model-Based Understanding of Communication and its Application to Artifact Design |
Project/Area Number |
15H01619
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
山本 真也 神戸大学, 国際文化学研究科, 准教授 (40585767)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 同調行動 / 向社会性 / 情動 / 共感 / ボノボ / チンパンジー / ウマ / 比較認知科学 |
Outline of Annual Research Achievements |
ボノボ・チンパンジーを対象に観察・実験研究をおこなった。サーモグラフィーを用いた顔面温度の計測、アイトラッカーを用いた視線・瞳孔反応の計測、およびKINECTを用いた身体動作の検出など、行動指標と生理指標を組み合わせた実証研究をスタートさせた。KINECTを使えば、対象に同調するキャラクターを操作的に作り出すことができ、同調の度合い(動きの大きさ・タイミング)等も実験的にコントロールすることができる。このようなキャラクターに対する選好性や生理反応を視線・瞳孔反応および顔面温度変化を通して検証し、同調行動と情動、とくに共感や向社会性との関連を明らかにしたい。そのためには対象に合わせたKINECTの調整・プログラムの作成が必要だが、同領域の他研究チームとの共同研究により、この問題の解決に向けた調整を進めている。 ボノボ・チンパンジーでの比較結果をより広い視野から議論・考察するため、アウトグループに当たる非霊長類種を対象とした比較研究にも着手した。具体的には、家畜化が社会的認知におよぼす影響を検討するために、ヒトとの関係の深いウマ・イヌを対象に同様の実験を進めている。 これまでの研究成果を基に、共感性の進化・メカニズムにかんする意見論文を執筆した。これまでの共感の進化モデルは、ヒトを頂点とした共感性の単純な直線的進化・発達を想定しており、複雑な共感性の発現を説明しきれていない。本論文では、直線的モデルの代わりに、3要素の組み合わせモデルを提唱した。他者との同一化・自他分離による他者理解・向社会性という3つの要素の組み合わせによって、様々な共感関連現象を分類し、適切な文脈に配置するというものである。この成果は心理学評論に掲載され、現在英文論文としても投稿中である。 ほか、ボノボの認知・行動にかんする英文学術書をBrill社から出版することができたのもH27年度の大きな成果のひとつである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
サーモグラフィーを用いた顔面温度の計測、アイトラッカーを用いた視線・瞳孔反応の計測、およびKINECTを用いた身体動作の検出といった新しい実験手法をボノボ・チンパンジー研究に導入した。ノウハウのない中でスタートさせた研究だが、実験手法の有効性が明らかになり、今後の発展が大きく見込まれる。また、ウマ・イヌでの比較実験という新境地の開拓にも着手することができた。こちらも順調に研究を軌道に乗せることに成功し、すでに研究成果を学会発表できるレベルにまで結実させている。世界初の試みであるウマでのアイトラッカーの実験などは現時点ではまだ準備段階だが、今後の進展が大いに期待できる。論文にかんしても、査読付き英文学術雑誌に3編、査読付き和文学術雑誌に1編、英文学術図書としても共同編集で1編・共同分担執筆として1編、和文一般雑誌に3編を出版するなど、順調に成果を発表できている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画を変更しなければならないような問題点はとくになく、これまでの研究方針を継続させる。ボノボ・チンパンジーでの同調行動の研究は、KINECTの調整・プログラムの作成などがカギになってくるが、現在進行中の他研究チームとの共同研究を進めることで解決したい。平成28年度はポスドク・大学院生等の研究協力者も増え、研究体制がより整う。これまでの研究方針に沿ったデータの蓄積を進めると同時に、ウマでのアイトラッカー研究など、新たな試みにも果敢に挑戦したい。論文発表については、まず、現在投稿中の論文3編の公表に向けて最大限の努力をする。現在収集中のデータについても速やかに公表できるよう、分析・論文執筆を進める。また、H27年度発表の英文書籍とは別にもう1冊のボノボに関する本を現在編集しており(米国Duke大学のBrian Hare博士との共同編集)、Oxford University Press社からH28年度中の発表を目指している。
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[Book] Intergroup Transfer of Females and Social Relationships Between Immigrants and Residents in Bonobo (Pan paniscus) Societies. In T. Furuichi, J. Yamagiwa, & F. Aureli (Eds.), Dispersing Primate Females: Life History and Social Strategies in Male-Philopatric Species.2015
Author(s)
Sakamaki, T., Behncke, I., Laporte, M., Mulavwa, M., Ryu, H., Takemoto, H., Tokuyama, N., Yamamoto, S., & Furuichi, T.
Total Pages
127-164.(本の総ページ数:299ページ)
Publisher
Springer-Verlag
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