2015 Fiscal Year Annual Research Report
細胞内でのタンパク質複合体の多重染色超解像イメージング
Publicly Offered Research
Project Area | Novel measurement techniques for visualizing 'live' protein molecules at work |
Project/Area Number |
15H01635
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
木内 泰 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70443984)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 超解像顕微鏡法 / 細胞骨格 / 接着斑 |
Outline of Annual Research Achievements |
複数のタンパク質結合サイトを持つタンパク質は、細胞内の適切な場所で適切な結合タンパク質と複合体を形成することで機能する。このようなタンパク質複合体の空間分布やその構成分子は、このタンパク質の機能を理解するために重要である。研究代表者は、すでに可視化できるタンパク質の種類の数に理論上の制限のない多重染色超解像顕微鏡法IRISを開発し、同一の細胞でアクチン線維と微小管、中間径フィラメント、接着斑の超解像イメージングを可能にしている。IRISでは、標的分子に結合するタンパク質のフラグメントをプローブとして用いる。このため、そのプローブと複合体形成が可能なタンパク質の空間分布をナノメートル精度でマッピングすることができる。本研究では、微小管の結合タンパク質であるCLIP-170、APC、MAP4、Tauや接着班局在タンパク質であるSrc、Paxillin、PIPKIγのフラグメントからIRIS用のプローブを作製した。その結果、CLIP-170フラグメントは、EB1存在下では微小管先端を可視化し、非存在下では微小管全体を可視化した。MAP4のフラグメントやTauは微小管全体を可視化したが、EB1存在下では微小管先端を可視化できなかった。このことは、微小管でEB1の分布によるタンパク質複合体の棲み分けが起きていることを示唆している。接着斑では、PIPKIγのフラグメントは接着斑全体を可視化したが、Srcのフラグメントは接着斑内で点状の構造を可視化した。このことは、Srcが認識するリン酸化部位が接着斑内に点状に分布していることを示唆している。これらの成果は、2015年のNature Methods誌の8月号に掲載された(Kiuchi et al., Nature Methods 12: 743-746, 2015)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
多重染色超解像顕微鏡法IRISは、標的分子に結合解離する蛍光プローブを用いる。標的に結合した状態のプローブを蛍光単分子画像として捉える。蛍光単分子の強度分布の中心点を抽出し、多数の中心点を積算することで光の回折限界を超えた超解像画像が再構築できる。このため取得する蛍光単分子画像の枚数に応じて、標的の標識密度を高めることができる。さらに蛍光プローブは結合解離しているために簡単に洗い流せる。そして別の標的に対する蛍光プローブと交換することで、多重染色超解像が実現できる。プローブとしては、標的に結合するタンパク質のフラグメントを用いるため、そのタンパク質が形成可能な複合体の分布をマッピングできる。本研究では、アクチン線維、微小管、中間径フィラメント、接着斑に局在する15種類のタンパク質から46個のフラグメントを作製し、18個のフラグメントがIRIS用のプローブとして使えることを示した。そして、それぞれのプローブの結合可能部位を同一の細胞で多重染色超解像マッピングすることに成功している。
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Strategy for Future Research Activity |
細胞骨格や接着斑といった細胞内構造の成長と崩壊は、様々な結合タンパク質によって空間的に制御されている。このような空間的な制御は、それらの結合分子が、細胞内構造の微細な構造の違いや足場タンパク質の分布を識別しているためと考えられている。本研究で得られた微小管や接着斑に局在するタンパク質由来のIRISプローブは、細胞骨格や接着斑を制御するタンパク質複合体の分布やその構成因子を解析するために有用なツールである。今後は、得られたIRISプローブの結合パートナーを可視化するプローブをペプチドや抗体から作製する。さらにその予想される結合パートナー分子をsiRNAで発現抑制した場合や過剰発現させた場合のIRIS超解像画像を比較することで、細胞骨格や接着斑上で形成される複合体の構成を明らかにする。 さらなる予定として物理的な力を細胞内シグナル伝達に変換するタンパク質複合体を解析する。細胞内では、物理的な力によってタンパク質の立体構造の変化することでシグナルが伝播すると考えられているが、その分子実体は明らかになっていない。そこで、得られたIRISプローブを使って固定した細胞を引っ張る前後で超解像を取得する。細胞を引っ張る前後でタンパク質複合体の分布を比較して、細胞が物理刺激を感知する分子実体を明らかにする。
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Research Products
(5 results)