2015 Fiscal Year Annual Research Report
身体失認・失行症における身体性変容の解明とニューロリハビリテーション法の開発
Publicly Offered Research
Project Area | Understanding brain plasticity on body representations to promote their adaptive functions |
Project/Area Number |
15H01671
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Research Institution | Kio University |
Principal Investigator |
森岡 周 畿央大学, 健康科学部, 教授 (20388903)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 身体性 / 失行症 / 運動主体感 / 身体所有感 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,脳損傷後の運動機能回復を阻害する身体失認および失行症における身体性(身体所有感・運動主体感)を変容を明らかにし,それらに対するニューロリハビリテーションを開発することとしている. 本年度においては,映像遅延システムを用いて,身体失認および失行症を有する者を対象に,視覚‐体性感覚間あるいは運動‐感覚間の不一致の検出特性を明らかにし,身体性変容の定量的評価方法を確立した.具体的には,精神科疾患の既往,重度の認知障害,視野障害のない脳卒中患者20名を対象に,触覚‐視覚間,固有感覚‐視覚間,随意運動‐視覚間の時間的遅延の検出特性を調査した.遅延条件には, 33・99・198・297・396・495・594msecの7つの遅延条件を設定し,得られた結果に対してロジスティック回帰曲線を適合し,心理物理曲線を求めた.求められた心理物理曲線から,遅延検出閾値と遅延検出曲線の勾配を算出した.そして各刺激条件における群間の比較と重症度との相関分析を実施した.その結果,失行罹患群では,非失行罹患群よりも,随意運動‐視覚間の遅延検出が困難であった.また失行の重症度と随意運動‐視覚間の遅延検出能力との間には有意な相関関係が認められた.このことから,失行症を有する脳卒中患者には運動プログラムの段階で何らかのエラーが生じていることが明らかとなり,今回実施した心理物理的評価方法が運動主体感の変容を捉えるための評価方法として妥当であるということを示した.さらに,これらの課題結果は感覚障害や運動麻痺とは関係しておらず,失行症状とのみ相関関係が認められたことから,本研究で実施した定量的評価方法が,身体性の変容を特異的に捉えることのできるものであることが裏付けられた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度に予定していた運動主体感および身体所有感の定量的評価方法の作成も成功し,実際の臨床現場での計測も実施することができた.さらには,運動主体感が変容しているであろう失行症の遅延弁別特性を明らかにすることにも成功した.一方で,身体所有感が変容している身体失認患者に対する評価に関しては,今回実施した心理物理的評価方法の理解そのものが乏しいこと,注意が散漫になり課題を正確に実施できないなどの問題が生じた.これに対しては,課題を簡略化するなどの工夫をして対応するとともに,身体所有感が軽度でも変容されている者も対象としていくことで対応していく.今回の実験参加者の中でも,身体失認を呈していなくても,軽度の身体所有感を変容を訴える脳卒中片麻痺患者では遅延検出能力が低下しているいう結果も得られていることから,そのような患者を対象とすることが望ましいことが想定される.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は症例数をさらに増やして計測することと同時に,損傷部位の同定あるいは運動準備電位の計測を通して,脳内神経メカニズムの探索を行っていく.さらには,それぞれの症例に合ったニューロリハビリテーションを開発する.
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Research Products
(10 results)