2016 Fiscal Year Annual Research Report
古代長江下流域における開発空間の歴史的考察
Publicly Offered Research
Project Area | Rice Farming and Chinese Civilization : Renovation of Integrated Studies of Rice-based Civilizations. |
Project/Area Number |
16H00745
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
大川 裕子 日本女子大学, 文学部, 研究員 (70609073)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 中国史 / 農業史 / 水利史 / 環境史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、文献史料を通して良渚文化期以降の長江下流域の開発を検討することにある。長江下流では山水奔流・太湖氾濫・銭塘江潮汐等、有り余る水をどのように排水するかが開発のカギとなった。このような低湿地帯の自然環境は人為的営みによりどのように克服・利用されたのか。本年度は、水利開発と稲作技術の進展という二つの側面から検討を行った。 水利調査としては、低湿地の水利開発が進展する以前、漢~晋代(2~4世紀)に山麓部~台地上に建設された大型水利施設の調査を行った。2016 年9 月、2017 年3 月の2回にわたり、浙江省の田螺山遺跡と良渚遺跡群を訪れた。とくに2017年3月には小山田宏一氏(水利技術史・奈良大学)、槙林啓介氏(A01班)の協力を得て、紹興地区の鑑湖と餘杭の南湖の調査を行った。また、3月24日~27日には、江蘇省に赴き、魏晋期の大型貯水・灌漑施設とされる丹陽・練湖および句容・赤山湖の調査を行った。 つぎに、農業技術については17世紀に編纂された『補農書』の分析を通して太湖南岸の考察を進めた。現在、大澤正昭(上智大学)・村上陽子(東京外大AA研)酒井駿多(上智大院)と共同で史料読解・訳注作成作業を進めている。『補農書』については1950年代、陳恒力・王達氏による現地農村調査を盛り込んだ先駆的研究が行われているが、2017年3月には南京農業大学に赴き、王達氏(南京大学)、王建革(復旦大学)と学術交流を行い、当時の調査状況、農書の記載に関して貴重な話を伺う機会を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前半期、すでに2015年度よりスタートしていた新学術領域全体の研究状況の把握に大方の時間を費やした。その後は当該課題の研究を順調に進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
2016年度の調査成果をふまえながら、2017年度は考察対象地域をさらに拡大する予定である。水利調査については、銭塘江南岸の寧波平原に魏晋期~唐代(3~9世紀)に造られた水利施設(広澤湖、東銭湖)を対象に調査を進め、この地域の低湿地環境が水利工事によりどのように改良されたのかを考察する。さらに、上虞~余姚一帯に漢代(2世紀)以降に造られた谷出口締切型ダムを調査し、早期の開発拠点の確認を確認する予定である。 農業調査については、『補農書』(16世紀)以前の農業実態を明らかにすべく、歴史記載の分析の他、とくに太湖低湿地周辺部におけるの農業について現地調査を行う予定である。 本年度は、当該研究の最終年度にあたる。新学術領域全体の多様な成果を吸収しつつ、研究をまとめる予定である。
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