2016 Fiscal Year Annual Research Report
アミロイド核の出現に先立つタンパク質初期集合および秩序化プロセスの解明
Publicly Offered Research
Project Area | Dynamical ordering of biomolecular systems for creation of integrated functions |
Project/Area Number |
16H00772
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
茶谷 絵理 神戸大学, 理学研究科, 准教授 (00432493)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 蛋白質 / ミスフォールディング / アミロイド / 核形成 / 生物物理 |
Outline of Annual Research Achievements |
アミロイド線維の核形成反応は、アミロイドーシスや神経変性疾患などアミロイド線維の沈着を伴う一連の疾病群の発症に深く関与すると考えられている。この反応は多くの場合線維形成反応全体の律速となっているが、一旦核が形成するとアミロイド線維は自己触媒的に成長、増殖し発病に至る。そこで本研究では、アミロイド線維形成反応の核形成段階のなかで、伝播性をもつ核が形成する際にどのようなタンパク質分子の会合が進行し秩序構造を形成するのかについてのメカニズムを明らかにすることを目的とする。 H26-27年度の研究では、インスリンアミロイド線維が形成する途中で過渡的に生成する線維前駆中間体を捕捉し、これが会合して成熟したアミロイド線維構造へと変化する様子を追跡した。これを踏まえてH28年度は、インスリン配列由来のアミロイド性ペプチド断片を主要な研究題材とし、線維前駆中間体を経由する反応経路の探索を行った。その結果、アミロイド線維形成初期段階に線維前駆中間体が明確に蓄積する反応経路を見つけることができ、CDやDLSなどの解析を通して、線維前駆中間体が段階的に構造発達する様子を確認した。また、連携研究者である山本直樹博士の協力によってテラヘルツ分光法を用いたアミロイド線維形成過程における水和状態の変化追跡のための初期検討にも着手し、インスリンについてネイティブ構造とアミロイド線維構造状態における水和の特性の観察を試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
線維前駆中間体を経由した新たなアミロイド線維形成反応の発見により、アミロイド核の生成に伴うタンパク質の集合の様子を時系列で追跡する研究へと発展させる段階に到達できた。今後の解析により、アミロイド線維構造が形成されるまでについてより一般的なメカニズムに迫りたいと考えている。さらに、テラヘルツ分光法の結果より水和状態の変化を追跡できる可能性が期待されるので、タンパク質、水両分子の視点から線維形成機構を総合的に理解できることが期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、インスリン由来ペプチド断片の線維前駆中間体を経由した反応経路の時分割測定をX線溶液散乱をはじめとしたいくつかの解析を複合的に組み合わせることで実施する。これにより線維前駆中間体が形成するまでの様子、さらに中間体が構造発達し核を生成する様子を時系列で明らかにする。並行して、ほかのタンパク質についても線維前駆中間体種の捕捉も試みる。インスリン由来ペプチド断片が形成する線維前駆中間体については、準安定構造として捕捉が比較的容易であるだけでなく、超音波パルスを利用することにより核構造へと転移できそうなので、この性質を利用して線維前駆中間体から核への構造転移を選択的に観測し、どのような構造転移を遂げることで線維前駆中間体から核構造が生成するかを明らかにする。さらにインスリンについては、ネイティブ状態とアミロイド線維の間に水和状態の差が見られた場合には引き続き核形成相の最中に水和状態の変化を観測できるか否かを検討する予定である。
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Research Products
(32 results)