2016 Fiscal Year Annual Research Report
多価カチオン媒介型実効引力に注目した蛋白質溶液の相挙動と動的秩序構造制御機構
Publicly Offered Research
Project Area | Dynamical ordering of biomolecular systems for creation of integrated functions |
Project/Area Number |
16H00774
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
秋山 良 九州大学, 理学研究院, 准教授 (60363347)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 酸性タンパク質 / 多価カチオン媒介引力 / タンパク質凝集体 / 強結合系 / 荷電コロイド粒子 / 電解質溶液 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度は、一昨年に研究室の院生が全員卒業してしまったことに伴う研究室の再立ち上げに時間を要することとなった。そのため、多くの研究を再立ち上げする必要があった。一つ一つ取り組み、積分方程式理論を用いて溶媒分子の効果を考慮した巨大分子の実効相互作用を計算した。そして、その実効相互作用に基づく統計力学理論計算を行い、相図の計算を進め論文を発表することができた。この統計力学理論は古典流体の密度汎関数理論と摂動論に基づいている。 上記の手法を用いて荷電系についての計算も進めつつある。特に本学術領域の課題の一つである多価カチオンを媒介者とした酸性タンパク質分子間の強い引力相互作用をベースにした相図の作成に成功している。その最初の研究発表を仙台において行われた研究会できた。さらに、荷電系の実効相互作用について積分方程式理論を用いて、共イオン効果まで実験と矛盾しない形で再現できることも発見した。その延長で、強結合系でも同様な振る舞いがあることを見出しており、論文にまとめている。この計算は実験的検証の際に意味を持つことになる。また、この実効相互作用を元に粗視化シミュレーションを行った。このシミュレーションの立ち上げは、今後多価カチオンを媒介者とした酸性タンパク質分子クラスター計算に適用できる。 派生的な研究として、剛体表面上での2成分剛体球系の分布関数を計算し、吸着の自由エネルギーや吸着量を計算する計算も行なっている。サイズによって選択的吸着が起こり、実験結果に近い結果を得ることができている。これも日本物理学会で発表を行った。 巨大分子の拡散係数の問題について理論研究を再開した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度前半は学生が全部入れ替わってしまったために、一時期非常に大きな遅れあるいは後退とも呼ぶべき状態が発生した。幸い、新たに所属した学生、博士研究員と共に一つ一つ再立ち上げを行い、遅れをかなりの度合いで取り戻した。実際、論文を出版し、招待に当たる講演を含む研究発表を数多く行うことができた。特に本学術領域に関係する招待講演が多かった。さらに、サイエンスカフェで新学術領域関連のアウトリーチ活動も実施できた。 また、実効相互作用に基づく相図の統計力学計算や粗視化シミュレーションを再スタートする事ができた。特に多価カチオンを媒介者とした強い酸性タンパク質分子間相互作用をベースにした相図の作成に成功し最初の研究発表をできた事、さらに、荷電系の実効相互作用について共イオン効果まで調べられた事は大きい。そうした、多くの進展が見られた。以上のことから『(2)おおむね順調に進展している。』とした。
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Strategy for Future Research Activity |
実効相互作用に基づく相挙動の統計力学計算を古典流体の密度汎関数理論と摂動論に基づいて進める。特に現在は簡略化した実効相互作用での計算なので、既に求められている具体的な実効相互作用を使いたい。また粗視化シミュレーションを積分方程式理論で計算した実効相互作用に基づいて行うことを続ける。派生的な研究として、剛体表面上での2成分剛体球系の分布関数を計算し、吸着の自由エネルギーや吸着量を計算する計算も行なっているがその論文化や引力効果の計算についてまで研究を進める。 現在進行中の論文の完成を急ぐ。特に実効相互作用の間接効果への分解の論文の作成を急ぐ。
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Research Products
(13 results)