2016 Fiscal Year Annual Research Report
配位結合を利用した脂質膜上での動的秩序形成と機能発現
Publicly Offered Research
Project Area | Dynamical ordering of biomolecular systems for creation of integrated functions |
Project/Area Number |
16H00777
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
大谷 亮 熊本大学, 大学院先端科学研究部(理), 助教 (30733729)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 脂質二分子膜 / 配位高分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、[PPh4]2[Mn(N)(CN)4].2H2Oを出発原料とし、多段階にイオン交換することで金属錯体脂質 [MnV(N)(CN)4][dabco-CnH2n+1]2 (n = 15~18) を合成した。水溶媒により再結晶することで、すべての錯体において単結晶を得ることに成功した (以下では、それぞれを 1, 2, 3, 4 と表記する)。単結晶構造解析より、すべての化合物において金属錯体と水分子で親水部、アルキル長鎖が鎖間の疎水性相互作用によってパッキングした疎水部を形成していることが分かった。1 と 3 は、アルキル鎖同士が平行にパッキングし、結晶水は全く同じ配列構造を有していた。一方、2 はアルキル鎖が交差しており、配列構造も前者とは異なっていた。また、4 に関してはアルキル鎖が平行にパッキングしているが、非対称単位に2種類の金属錯体分子が含まれていた。ここで[MnV(N)(CN)4]2- のシアノ基間の配位結合角度に着目すると、パッキング構造の変化に対応してMn錯体の対角線上のシアノ基間の結合角度が異なっていることが明らかとなった。固体の電気化学測定から、それぞれの錯体の五価六価に関する酸化還元挙動について検討した。分子構造と酸化還元電位について詳細に検討したところ、angle α、β の角度が小さくなるにつれて電位が上昇するという相関関係を導くことに成功した。この相関は、前駆体 5 にも適応でき、五価六価間の構造相転移のエネルギーの違いを反映していることがDFT 計算から明らかとなった。現在、今回合成した錯体脂質を用いて、生体脂質との複合化リポソームの形態制御と物性解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
金属錯体脂質のシリーズ化および電気化学特性の解明に成功した。得られた錯体脂質は、生体脂質との複合化により複合化リポソームへと展開でき、アルキル長鎖の長さによる形態制御、物性制御が可能となる。また、電気化学特性は、複合化リポソームの機能解析の際に基礎となる重要な知見である。以上より、おおむね順調であると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
金属錯体脂質、生体脂質を任意の割合で混合することで複合化リポソームを合成し、その形態、物性について検討する。特に、錯体脂質の割合変化による粘性の違いに関する知見を得る。また、GUVを合成し、脂質膜上での配位高分子化について検討し、GUV上での配位結合ネットワークの形成過程について明らかにする。
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Research Products
(10 results)