2016 Fiscal Year Annual Research Report
分化する超分子集合体:エネルギーランドスケープに基づく高次構造と機能の制御
Publicly Offered Research
Project Area | Dynamical ordering of biomolecular systems for creation of integrated functions |
Project/Area Number |
16H00787
|
Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
杉安 和憲 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, 主幹研究員 (80469759)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 超分子化学 / 超分子集合体 |
Outline of Annual Research Achievements |
分子が自発的に組織化する現象(自己組織化)は、ナノスケールの有機材料をボトムアップ的に創製するアプローチとして注目を集めている。しかしながら、分子の自己組織化のプロセスは、熱力学的な安定性のみを反映して自発的に進行するため、思いのままにコントロールすることが非常に困難である。例えば、得られる分子集合体のサイズ(長さや面積)をそろえることはエントロピー的にきわめて難しい。 われわれのグループでは、熱力学的に準安定な超分子集合体に関する研究を進めてきた。準安定状態を経由して自己組織化を進めることによって、熱力学的には得ることが難しい分子集合体を創製できることが明らかになりつつある。今回、以前に報告しているポルフィリン分子の構造を改変し、その自己組織化挙動について評価したところ、ある種の分子について、ひとつの初期状態から全く異なるふたつの終状態が得られることを発見した。本研究は、この『分化』のような現象が、複数の自己組織化過程が複雑に影響を及ぼし合うことで発現されていることを明らかにした。そして、このメカニズムの理解を推し進めることによって、成長の「タネ」として添加する超分子集合体の種類と量を変えることで、1分子幅のナノファイバーの長さや、1分子厚のナノシートの面積を制御することに成功した。 本研究は、分子の自己組織化を制御する新手法として今後の材料創製研究に新たな展開をもたらすと期待される。実際に、得られた1次元および2次元の超分子集合体が、同一の分子から構成されているにもかかわらず異なる電子的特性を有していることを確認している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では、超分子集合体の分化現象のメカニズムを分子論的に理解し、最終的には得られる物質の物性・機能をつくり分ける事を目的としている。今年度でこれらの当初の目的は達成された。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究は、ポルフィリン誘導体については、当初の目的を達成した。今後は、ポルフィリン誘導体で見られた特殊な挙動が、他の分子系でも同様の理解から設計・構築できる事を実証する事が重要になる。ひとつの特殊な例として本研究を終わらせず、合成分子システムと生命分子システムに共通した動的秩序形成の原理をあぶり出す。
|
Research Products
(16 results)