2016 Fiscal Year Annual Research Report
細胞膜受容体の動的会合体形成と分子認識反応
Publicly Offered Research
Project Area | Dynamical ordering of biomolecular systems for creation of integrated functions |
Project/Area Number |
16H00788
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
佐甲 靖志 国立研究開発法人理化学研究所, 佐甲細胞情報研究室, 主任研究員 (20215700)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 1分子計測 / 情報伝達 / 受容体 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞膜の受容体蛋白質が細胞外情報に応答して動的に会合体の組み替えを起こし、細胞内外の蛋白質分子との特異的な反応場を形成する過程の理解を目標として研究を行っている。細胞膜における、上皮成長因子受容体(EGFR)・代謝型グルタミン酸受容体(mGulR)の1分子動態を研究対象とする。本年度は細胞膜脂質によるEGFRの会合体調節とmGluRの所属するGPCR一般の細胞膜動態と活性化の関係を研究した。 EGFRはコレステロール、スフィンゴミエリンに富む膜ドメインに濃縮していることが生化学研究で知られているが、その実体や機能は明らかでない。我々は1分子計測によりコレステロールがEGF結合後のEGFRの運動と会合を制御し、細胞膜での情報伝達に関与することを明らかにした。高次会合体の形成はEGFRの正常な機能発現に必須である。そこで超解像顕微鏡法でEGFRと種々の脂質の共局在を計測する実験系を立ち上げた。mGluRは3量体G蛋白質共役型受容体(GPCR)の一員である。我々はこれまでにmGluRの活性化によりその側方拡散運動が低下し、不活性化で上昇することを示してきたが、異なったサブファミリーに属するGPCR9種類の動態を新たに計測し、この性質がmGluRだけでなく、GPCR一般に見られることが明らかになった。各々の受容体は相互作用相手である3量体G蛋白質の種類が異なっている。従って、下流の情報処理経路に依らず、運動計測によりGPCRの活性化を検出できる可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究計画は、膜受容体の会合形成と受容体機能の相関を明らかにすること、及び、高次会合体の微細構造と機能を明らかにすることであった。会合と機能の相関については、EGFRの計測で、細胞膜からのコレステロール除去がEGFR分子の活性化に必要なリン酸化を阻害しないにもかかわらず、高次会合体の形成を阻害し、細胞質蛋白質GRB2との相互作用を阻害することを発見し、分子自身の活性化では分子機能は不十分であり、高次会合体形成が本質的に重要であることを示した。また、計測したGPCR全てで運動低下と活性化にmGluR同様の高い相関があることが示されたが、会合体形成は運動低下の一要因であると考えられる。高次会合体の微細構造は超解像顕微鏡法PALM, STORMを使って進めている。Doronpa, PA-mCherryを標識とした2色の超解像観察系を立ち上げ、EGFRと膜脂質・細胞質蛋白質の同時計測を開始した。内在性EGFRの影響を抑えるため、EGFRをノックアウトしたHeLa細胞を樹立して計測を行っている。膜脂質による制御に注目し、PS, コレステロール、PIP2, PIP3の標識とEGFRの共局在を観察したところ、EGF添加後に現れる数百ナノメートルのEGFR集合体で、PIP2との間にのみ強い共局在が観察されるなど、EGF, 脂質特異的な相互作用変化が示唆されている。以上のように、両研究計画とも順調に進行しており、特に前者に関してはEGFR, GPCR双方の論文を提出中である。
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Strategy for Future Research Activity |
全体的には順調に進んできているので、特に変わった方策はなく、これまでの計画通り進めていく。超解像計測に関する実験を完成させることが来年度の最重要課題である。
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