2016 Fiscal Year Annual Research Report
揺らぐ非平衡構造によるフィードバック制御:べん毛モーターのトルク発生機構の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Synergy of Fluctuation and Structure:Foundation of Universal Laws in Nonequilibrium Systems |
Project/Area Number |
16H00791
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
鳥谷部 祥一 東北大学, 工学研究科, 准教授 (40453675)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | べん毛モーター / 回転電場法 |
Outline of Annual Research Achievements |
1. べん毛モーターの高精度トルク制御の実現 回転電場法をべん毛モーターに応用することで,高精度のトルク制御・測定を行った.以前にも回転電場法のべん毛モーターへの適用例があったが,外部トルクの校正が実現しておらず,限定的な使い方しかできなかった.我々は,回転分子モーターであるF1-ATPaseで実現していたトルク校正法をさらに発展させ,べん毛モーターの高精度外部トルク制御に成功した.これまで,測定とトルク校正を独立に行っていたが,細胞の状態は時々刻々と変化するため,効率化が必要である.そこで,測定と同時にトルク校正を行えるようにシステムを改良した.これにより,より高精度のトルク制御・測定を実現した. 2. 1つのべん毛モーターのトルク特性の高精度測定 上記のトルク校正方法を用い,1つのモーターでトルク-スピードカーブを高精度に測定することに成功した.トルク-スピードカーブは,モーターの性能指標として重要である.従来のビーズアッセイ法では,多数のモーターについて平均をとることでトルク-スピードカーブを得ていたが,(i) モーターごとに異なる特性が平均化されてしまう.(ii) モーターが出せる最大トルク(ストールトルク)や無負荷時の最大回転速度(ゼロトルクスピード)など重要な指標が外挿で推定するしかなかった.新しい系により,これらの問題を解決し,ストール付近でモーターの発生トルクが急激に高くなるなど,モーターのトルク発生機構に関する新しい知見が得られた. これまで,べん毛モーターはパワーストローク機構により回転するというモデルが有力だと考えらえてきたが,我々の結果から,パワーストロークとラチェットの組み合わせで回転している可能性が示唆された.また,個々のモーターのトルクスピードカーブを測定することで,モーターや細胞の「個性」が測定可能なシステムを構築できた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
すでに,べん毛モーターの高精度トルク制御を実現し,1つのべん毛モーターのトルク特性の高精度測定に成功した.これにより,これまでは多数のモーターで平均化されてしまい測定が困難であった,モーターの「個性」を測定することができるようになった.また,高精度測定により,トルクスピードカーブの詳細な形状が得られ,べん毛モーターのトルク発生機構に関する知見が得られた.その一方で,当初,固定子の脱着による動的なトルク変化を観察できると期待していたが,まだ観測できていない.
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Strategy for Future Research Activity |
1. 解析法を改良するとともに実験条件を検討し,より高精度のトルク測定・制御を実現する.これにより,固定子脱着によるトルク変化を測定する. 2. 蛍光たんぱく質を融合した固定子を用い,固定子のモーターへの結合数を蛍光強度から測定できる系はすでに構築できている.固定子脱着とトルク発生の同時観察を行い,固定子脱着の結合レートのトルク依存性を測定する.我々は,結合ではなく脱離のみがトルク依存性を持っているという仮説を立てているが,その検証を行うことで,べん毛モーターの固定子数制御の機構に迫る.
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