2016 Fiscal Year Annual Research Report
高分子溶液を内包したベシクルの外部揺動に伴う内部粘弾性と形の揺らぎ
Publicly Offered Research
Project Area | Synergy of Fluctuation and Structure:Foundation of Universal Laws in Nonequilibrium Systems |
Project/Area Number |
16H00796
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
柳澤 実穂 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 特任准教授 (50555802)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 細胞モデル / 膜変形 / 粘弾性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、細胞がみせる形態変化を、様々なゆらぎのもとで、粘弾性体である細胞質と細胞膜が強く相関する「ゆらぎ・構造相関」の視点から解析することを目的としている。本目的のために、高濃度の高分子溶液を内包したリン脂質膜小胞(ベシクル)やリン脂質で覆われたエマルション(ミクロ液滴)を細胞モデルとして用い、熱的・非熱的ゆらぎを与えた際の高分子の粘弾性と膜形態の変化を解析する。平成28年度は、(1) 粘性流体を内包したリポソームの形態変形、(2)非熱的ゆらぎを与えた際のベシクルの形態変化について主に実験を行い、以下の結果を得たので報告する。 (1) 高分子溶液を内包したベシクルの高浸透圧下での変形 我々はこれまでに、高粘性流体である高分子溶液を内包したベシクルを高浸透圧環境に置くと、内部粘性に依存して膜小胞形成(budding)かチューブ状突出形成(tubing)が現れることを報告している。しかし、これらの変形を決定付ける要因が、内部粘度であるという明快な証拠が無かった。そこで本研究では、粘度が既知の高分子溶液をベシクルに内包し、その後高浸透圧下に置くことで、内部粘度と膜変形との相関関係を調べた。その結果、初期の内部粘度に依存しており、水の約2倍の粘度を超えると、budding変形からtubing変形へ転移することを見出した。 (2) ベシクルの一次的な強制変形とその履歴 非熱的ゆらぎを加えたベシクルの膜形状ゆらぎを解析するために、均一相ベシクルに対してマイクロピペット吸引により一時的に外力を与え、強制変形させた後の、膜形状の緩和過程を解析した。その結果、強制変形させた部分がtubingすること、またレーザー照射により熱ゆらぎを与えると、元の球形状へ戻ることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は、ベシクルに対し、レーザー照射による熱的ゆらぎと、高浸透圧下での脱水とマイクロピペットによる吸引という非熱的ゆらぎを与えた際の、ベシクルの膜変形を解析した。その結果、これらの熱的・非熱的ゆらぎにより熱平衡状態では見られなかった膜変形が現れること、またそれらは内部の粘度に強く依存することを、実験的に見出した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の研究成果で観察されたベシクルの膜変形を内部粘度と相関付けて解析する過程で、ベシクル内に封入された高分子溶液の粘度がバルクとは異なるという示唆が得られた。そこで、ベシクルと同様に、リン脂質膜で覆われたミクロ空間に高分子溶液を閉じ込め、高分子濃度や閉じ込めサイズに応じた高分子溶液の粘度を、高分子拡散から推定する研究を行うこととする。
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