2016 Fiscal Year Annual Research Report
Morphologiacl and physical analysis of self-growing protocell
Publicly Offered Research
Project Area | Synergy of Fluctuation and Structure:Foundation of Universal Laws in Nonequilibrium Systems |
Project/Area Number |
16H00797
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
車 兪徹 東京工業大学, 地球生命研究所, 特任准教授 (40508420)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | プロトセル / ソフトマター / 人工細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
脂肪酸の生合成に関わる大腸菌由来の酵素、fatty acid binding protein(Fab)の8種の酵素と、acyl carrier protein (ACP)、TesAを全て個々に精製した。精製には、HisTrapカラムとHiTrapQカラムを用い、液体クロマトグラフィーにより低温下で行なった。精製純度をSDS-PAGEにより確認したところ、全てにおいて約95%以上の純度で精製することに成功した。しかし、FabZにおいては精製段階から深刻な凝集化が観察された。 精製酵素を基質となるacyl-CoAとmalonyl-CoA、電子供与体であるNADPHとNADHを混合し、37度で脂肪酸合成反応を行なった。その結果、C16:0からC12:0までの鎖長の脂肪酸の合成がLC-MS解析により確認できた。これについては現在定量中である。 しかし、反応中、数マイクロメートルほどの大きさの凝集体が、時間依存的に形成されること、短い反応時間が現在問題となっている。形成された凝集体が何の酵素なのか、現在SDS-PAGEにより解析中である。何れにしても、反応産物である脂肪酸と酵素タンパク質が結合し凝集化を引き起こしていることがうかがえる。 今年度は本研究に技術的に関係する内容として、和文レビュー・ブックチャプター合わせて4報を報告した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初凝集化のため精製が困難であった酵素ACP とFabZについて、発現株、培養条件、菌体破砕条件、バッファー条件等を最適化することで克服することができた。しかしながら、 FabZに関しては依然と凝集化しやすく、単体で安定に存在することができにくいタンパク質であることがわかった。またこのfabZに関しては、ACPと共存させることで安定的に可溶性の状態を保つことから、生体内では両者が複合体を形成していることが予想される。このことは2016年のCell Researchにも報告例がある。 これまでの生化学的解析により、FabZの凝集化が合成した脂肪酸によるものであることが示唆されている。このことは、プロダクトである脂肪酸によるネガティブなフィードバック機構がタンパク質のレベルで行われていることほのめかすものである。このように、酵素の精製過程を経て新たな疑問が出てきたことは、次の研究の方向性を決めるものであり、その意味では順調に進展していると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
問題点である、Fab酵素の凝集化と、脂肪酸合成反応の短時間内の反応停止について、進展と解決を狙う。すでに、リン脂質膜の投下による凝集化の抑制を検出している。そのため、合成産物である脂肪酸が、再構築した合成系内でどのようダイナミクスを経ているのかについて、解析を進める。また、Giant Unilamelar Vesicle(GUV)内での脂肪酸合成を積極的に行い、GUVの形態的変化の観察を試みる。さらに脂肪酸がGUV膜に挿入した直接の証拠を得る方法を模索する。 これらの推進方策により研究を進めることで、初期細胞生命における自己複製機構がどのように成立していたのかを考える手がかりとするだけでなく、細胞質内での脂肪酸合成の動的なプロセスを解明することを狙う。
|