2016 Fiscal Year Annual Research Report
ミトコンドリア分裂過程におけるナノスケール力学機械特性の時空間ダイナミクスの検出
Publicly Offered Research
Project Area | Synergy of Fluctuation and Structure:Foundation of Universal Laws in Nonequilibrium Systems |
Project/Area Number |
16H00799
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
渡邉 信嗣 金沢大学, バイオAFM先端研究センター, 助教 (70455864)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 計測・制御 / 走査プローブ顕微鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、液中の生物試料を構成する生体膜が動的に変化する過程において、どのような力学構造がマクロ形状変化を制御するのかという物理的実態を理解するために、膜表面のナノスケール機械特性に着目し、これを定量計測できる手法を確立することを目的とする。このために、 (a) 生体膜ゆらぎ計測手法の確立を行い、オルガネラや生細胞の生体膜変位ゆらぎを、ナノメートル、マイクロ秒程度で安定的に計測できるシステムを構築するとともに、膜変位の経時変化から局所膜張力を計測する手法を確立することを目指す。 平成28年度は、イオン伝導顕微鏡の基本性能を向上させ、局所膜変位のゆらぎを計測する準備を整えた。特に、プローブを高速に走査するためのナノポジショナーの機械設計を考案し、ナノポジショナーを作成した。また、このナノポジショナーの設計に関する特許を出願した。さらに、ナノポジショナーの動作時の機械的性能を大幅に改善することを目指して、ナノポジショナーに生じる不要な振動成分を制御する手法を考案し、走査プローブ装置に実装した。これにより、高速走査時において、従来よりも安定に液中の生物試料を計測することが可能になった。現時点では、数マイクロメートル×数マイクロメートルの走査領域を、100×100ピクセルの画素数で、数秒以内に画像取得可能になった。また、計測系のノイズ改善を検討した。結果として、走査プローブの垂直方向の変位ノイズを、従来値の数ナノメートル程度から、0.5ナノメートル程度に改善することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成28年度は、イオン伝導顕微鏡により、液中の生物試料の局所膜変位ゆらぎから、局所膜張力を計測する手法を確立することを目指した。しかし、局所膜変位ゆらぎを計測するための装置の性能向上を達成することにとどまり、生物試料の計測を行うことができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、イオン伝導顕微鏡により駅中の生物試料の局所膜変位ゆらぎを検出することを試みる。当初は、生物試料として、単離したミトコンドリアの生体膜表面を計測することを計画していたが、単離プロセスに問題があり、試料系の不純物を取り除くことが課題となっている。このため、計測が容易な、生細胞表面の計測を行うことを計画している。試料系を変更することになるが、生体膜表面の局所動的プロセスをとらえるという当初の目的からは大きくはずれることはないと考えている。
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