2016 Fiscal Year Annual Research Report
Study of structure effect of proline-type non-natural amino acids incorporated in alpha-amino acid peptides
Publicly Offered Research
Project Area | Science on Function of Soft Molecular Systems by Cooperation of Theory and Experiment |
Project/Area Number |
16H00822
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
尾谷 優子 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 講師 (60451853)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | プロリン型アミノ酸 / アミド平衡 / コンホメーション / ペプチド / オリゴマー / 分子動力学計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
プロリン型二環性アミノ酸ホモオリゴマーの規則構造化 本研究では、アミド結合のシス体とトランス体が平衡で存在するプロリン型アミノ酸ホモオリゴマーの規則構造化について分子動力学計算により調査した。 短いペプチドを用いた安定な規則構造の構築には環構造を持つアミノ酸が有用であることが知られており、プロリンやその誘導体は有用な骨格である。プロリンオリゴマーはアミド結合にシス-トランス平衡が存在する。以前私達は、プロリンのコンホメーションを架橋により固定した二環性のβ-アミノ酸を連結させたオリゴマーを合成した。アミドのトランス-シス平衡の存在により、3量体以上では溶液構造の解析が困難であった。そこで今回、分子動力学(MD)シミュレーションにより、溶液中での二環性β-プロリンオリゴマーの規則構造化について検討を行った。プロリンアミドのトランス-シス異性化のエネルギー障壁(回転障壁)は高く、この障壁を越えて構造探索を行う必要がある。そこでアンブレラサンプリングの手法を用いた。アンブレラポテンシャルの導入によりアミド結合の二面角のパラメータを変更してMD計算による構造探索を行い、回転障壁やシス/トランス異性体比などの実験値を再現するパラメータを用いて再重み付けした。その結果、短い2量体ではトランスアミドとシスアミドの比に大きな差はないが、オリゴマーが長くなるにつれてトランスアミド体を多く含む伸長した構造がより安定化されることが分かった。 また、置換基の立体効果によりアミド平衡をシスまたはトランス体の一方に完全に制御したプロリン型の二環性の人工アミノ酸をモジュールとしてα-アミノ酸のペプチド中に導入し、ペプチドの構造化・構造制御を行うための基礎検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は以前から行ってきたペプチドオリゴマーの分子動力学計算の論文がThe Journal of Physical Chemistryに採択され、出版することができた。その結論の考察・解釈に必要な様々な解析計算を行うことができた。また、今回実績概要には記載しなかったが、α-アミノ酸結合へテロペプチドのコンホメーション解析を行い、以下の知見を得た:二環性β-プロリンモデル化合物のN末端側に種々のα-アミノ酸を結合させたヘテロペプチドを合成し、これらがアミノ酸配列に依存せずいずれもアミドの平衡が溶液中でシスアミド体のみに偏ることを明らかにした。さらに、トランスアミド体を形成する二環性アミノ酸とアラニンを交互に連結し、ヘテロオリゴマーの2量体から8量体までを得た。NMR (NOESY) スペクトル、円二色性(CD)スペクトルおよびMD計算から、最小単位からよく制御された規則構造を取っていることが分かった。二環性アミノ酸は隣接するα-アミノ酸の構造制御に有用であることが示唆された。 このように、ホモオリゴマーの研究だけでなくα-アミノ酸と人工アミノ酸のヘテロペプチドの構造研究も進んでおり、概ね順調であると考えた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究予定は、二環性アミノ酸の単量体や2量体をを構造制御ユニットとしてα-アミノ酸ペプチドに組み込み、効果的に構造を制御する構造基盤を明らかにするとともに、新たな構造規則性の創出や機能に応用する。 (1)α-アミノ酸とプロリン型二環性人工アミノ酸を連結したヘテロペプチドの構造解析 プロリン型二環性アミノ酸(X)のN末側にα-アミノ酸を連結させたジペプチド、トリペプチドは、橋頭位に張り出した置換基の立体効果により、アミド結合がシスアミド体のみを取ることを見出している。一方ラマチャンドランプロットで表されるように、α-アミノ酸がペプチド中で取りうるコンホメーションは複数ある。このような短いペプチドの溶液中の主鎖コンホメーションについてNMRや赤外分光法、ラマン分光法などの各種分光学的手法や計算科学を用いた解析を行い、Xの近傍アミノ酸に対する構造制限効果を調べる。また、XのC末側に連結させたα-アミノ酸に対する構造効果も調べる。 (2)環状ペプチドに対するプロリン型アミノ酸の構造化効果 ターン構造はタンパク質(ペプチド)-タンパク質相互作用によく見られる重要な構造でああり、コンホメーションの平衡にあるペプチド活性構造としてターン構造をとることが報告されている。また、環状ペプチドは生物活性を持つ例も多く報告されているが、分子内水素結合の組み替えにより、複数のコンホメーションが存在する。本課題では、プロリン型の各種アミノ酸を導入した小環状ペプチドを合成し、コンホメーションが制限されるかを調べる。合成に先立ち、導入する人工アミノ酸や導入位置およびアミノ酸配列を変化させて網羅的な分子動力学計算を行い環状ペプチドの構造とその安定性の予測を行う。また、膜透過性や、酵素切断に対する安定性を調べる。
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[Journal Article] Conformational Constraint of the Glycerol Moiety of Lysophosphatidylserine, an Emerging Lysophospholipid Mediator, Affords Compounds with Receptor Subtype Selectivity2016
Author(s)
Sejin Jung, Asuka Inoue, Sho Nakamura, Takayuki Kishi, Akiharu Uwamizu, Misa Sayama, Masaya Ikubo, Yuko Otani, Kuniyuki Kano, Kumiko Makide, Junken Aoki, Tomohiko Ohwada
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Journal Title
The Journal of Medicinal Chemistry
Volume: 59
Pages: 3750-3776
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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