2016 Fiscal Year Annual Research Report
非平面π共役分子ヘリセンの集積化と光学機能の制御
Publicly Offered Research
Project Area | Science on Function of Soft Molecular Systems by Cooperation of Theory and Experiment |
Project/Area Number |
16H00824
|
Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
中野 幸司 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70345099)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | π共役分子 / 光物性 / 超分子化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,螺旋状にねじれたπ共役分子「ヘリセン」を規則的に集積化することで,そのキロプティカル特性を向上させ,単分子では不可能な革新機能を発現する柔らかい分子系を創製することを目指す. (1)新規[7]ヘリセンの合成:ヘリセン骨格に導入するヘテロ元素の種類が構造や物性に及ぼす効果についての知見を深めるために,シクロペンタジエニル環がピロール環もしくはホスホール環に置き換わった新規[7]ヘリセンを設計し,その合成に成功した.チオフェン環二つがベンゼン環に置き換わった対応する[7]ヘリセンとの比較により,チオフェン環の導入によって吸収および発光スペクトルが短波長シフトすることを明らかにした.また,これまでに合成に成功しているアザ[7]ヘリセンに関して,各種置換基を導入した誘導体を合成した.電子供与性基および電子求引性基一つのみを導入した誘導体では,吸収および蛍光スペクトルがほぼ同一であるのに対して,電子求引性基二つを導入した場合には,蛍光スペクトルで顕著な長波長シフトが観測された.また,各誘導体のCPLスペクトル測定の結果,これまでに合成したヘテロヘリセンの中で最も大きなg値を示すことが分かった. (2)ヘリセン集積体の構築 前年度に,アルキル基の導入によって溶媒への溶解性が向上することが分かっていたヘリセンを側鎖にもつヘリカルポリアセチレンに関して,その光学的に純粋なモノマーの合成およびそのモノマーの重合に成功した.ラセミ体を用いた場合と同様に,アルキル側鎖の導入により得られる高分子の溶解性が向上することが分かり,溶液状態でのスペクトル測定も可能となった.また,ヘリセンが側鎖に集積化された高分子として,ポリメタクリル酸エステル側鎖にヘリセンを導入した新規高分子の合成にも成功した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)今年度新たに合成したヘリセンは,その末端芳香環への官能基導入が容易である.重合や超分子形成に必要な官能基を導入することで,ヘリセン集積体の構築へと展開できる. (2)当初の計画通り,ヘリセンを集積化される高分子の土台として,ポリメタクリル酸エステルも適用可能であることを示すことができた.また,適当なアルキル差を導入することで,目的のヘリセン集積体に懸念される低い溶解度も克服できる可能性を見出した.これらの成果は,翌年度のヘリセン集積体構築に展開できる.
|
Strategy for Future Research Activity |
(1)ヘリセンを側鎖に保つ螺旋高分子:これまでに,側鎖にヘリセンを導入したヘリカルポリアセチレンやポリメタクリル酸エステルの合成に成功している.そこで,螺旋構造の形成が期待される高分子として,ポリイソシアナートに着目し,ヘリセン置換モノマーの合成と,その重合をおこなう.ヘリセンとしては,設計・合成が容易なアザ[7]ヘリセンを適用する.合成の都合上,ラセミ体のアザ[7]ヘリセンを用いてモノマーの合成および重合の条件を確立したのち,光学活性体を用いて目的の螺旋高分子を合成する.また,既にラセミ体を用いて合成に成功しているヘリセン導入ポリメタクリル酸エステルに関しても,光学活性体を用いて合成をおこなう.目的の高分子が得られれば,モノマーと得られる螺旋高分子のキロプティカル特性(ORP・CD・CPLなど)を比較することで,それらの特性の増幅が起きているかを明らかにする. (2)配位結合による自己組織化を利用したヘリセンの高次集積化:ヘリセン末端にアミン系配位子やカルボキシ基を導入し,それらを金属と混合することで,超分子型のヘリセン集積体が得られるかを検討する.目的の集積体を構築できれば,キロプティカル特性を評価し,集積化の効果を明らかにする.
|